警報、その5。 ページ7
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「じゃんじゃかじゃん!」
「じゃーん?」
購買から戻ってきた治くんは、先ほど別れた角名くんと合流して自分の席に座り込んだ。そんな彼がこちらを向いて大仰な口頭SEとともにバッグから取り出したのは、手のひらにおさまるくらいのサイズをしたおにぎりである。コンビニやスーパーのものではなく、恐らく手作り。
「どうしたの?これ」
「俺が作ってん」
「治くんが」
ああ、と納得したように頷いてみせる。
そういえば確かに、治くんは食いしん坊なだけではなく料理にも精通しているんだということを思い出した。去年のバレンタインデーであげてもいないのにお返しを貰った時は、とっても美味しいマフィンだったな。
ラップに包まれたそれをまじまじと見てみる。形も綺麗で米も潰れていない、とっても美味しそうなおにぎりだ。
「すごいね、美味しそう……」
ぼそっと独り言でそう言うと、めざとく聞きつけた治くんはきらきらと目を光らせた。まるで、その言葉を待ってました!と言うように。
「ほんならAちゃん、これ食う?人の作ったモンに抵抗とかなければ……あ、これシャケなんやけど平気?」
「え、あ、うん。でも私弁当あるからさすがにおにぎりは入らないかなあ」
「ええ、俺はAちゃんに食べて欲しいんやけど……」
180センチ越えの大男の必殺技、上目遣いが炸裂した。うるうるの大きい瞳がじっとこちらを見つめている。
わかっている、私はめっぽうこの戦法に弱い。心なしかおにぎりまでもが「ボクを食べてよ!」と主張しているように見えた。それはまあ気のせいなんだけど、そのくらい彼のおにぎりは気になる。
「た、食べたいよ、すっごく食べたいけど……うーん……」
「ほんならオヤツで!」
「いや、宮本さんはオヤツに飯食べないでしょ」
冷やかしたのはもちろん角名くん。彼の言葉を聞いて治くんはびっくりしたような顔をした。
「あ、なら治くん、私のお昼食べる……?」
私はダメ元でそう提案した。さすがの治くんでもパンに加えてお弁当はきついか、なんて思ったけれど、治くんの表情は予想と全く違くて。
「ええの!?ほんまに!?Aちゃんありがとお!」
「え、逆にいいの?いいなら……はい、どうぞ」
私は弁当箱を治くんの方に向けた。割り箸を持ってきていてよかったな……さすがに自分の箸は使わせられないから。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時