糖分過多警報。【宮治】

小休止。 ページ6

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side 角名



「治くんってさ、結構可愛いところあるよね」

「宮本さん、ついにアイツに洗脳でもされた？」


宮本さんの意外な言葉に驚いたのも束の間、俺はくつくつと笑いを溢した。昼休みで治は購買へと戦争に出向いているが、弁当の俺はひと足先に治の席へと向かうのが習慣だ。そんな治の席の後ろである宮本さんと話す機会も少しだけ増えるわけで。

俺の失礼な物言いももう慣れたものらしく、宮本さんは眉ひとつ動かさずに続ける。


「角名くんよりはずっと可愛げあるよ」

「急に流れ弾寄越してくるのヤメテ」

「ごめんごめん、冗談」


お詫びにどうぞ、とチロルチョコを手渡されたので、「ありがと」と言って素直に受け取った。

常に何かしらお菓子を持ち歩いている宮本さんだが、彼女自身がそれを食べているところはあまり見ない。


「……実際さ、治のことどう思ってるわけ？」

「治くんのこと？」

「すげえ構われてるのに結構あっさりした扱いするじゃん」


治の女性人気が高いのは宮本さんだって重々承知しているはずだ。まあ確かに顔はいいよな、と思う。それに、双子の片割れである侑に比べたら性格もいくらかマシだ。

しかしそんな学校をあげてのモテ男にあんなに好き好き攻撃を喰らっているはずの宮本さんは、全くあいつに靡く様子がない。あくまでお友達、として接しているようだけど。


「私は治くんのこと普通に好きだよ、面白いし。距離感たまにわからなくて焦るけどね」

「焦ってるんだ。全然そうは見えないけど」

「焦ってるって思われるの恥ずかしいじゃん？」


宮本さんはそう言ってはにかんだ。普段はあまり表情を崩すところを見ないから、なんだか新鮮なものを見た心地である。


「それよりも私は治くんがわかんないよ……好きっていうのも本心なのかどうか」

「さ、どうだかね」

「高校生のノリみたいなものかなって思って」


本気にしちゃったら迷惑かな、と、宮本さんは涼しげに笑った。確かにそう捉えることも出来なくはないけれど、多分、治は。



「ま、俺は口出さないけどね。二人のペースでいいんじゃない……あ、やべ、治戻ってきた。話してたってバレると面倒くさくなるからじゃあね」

「角名くんってそういうところあるよね。バイバイ」


小さく手を振る宮本さんに目線だけで会釈をして、俺はその場を立った。


「……ただのノリじゃ、あそこまでしないよな」


口の中だけで呟いたその言葉は、教室の雑踏の中に消えていった。



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