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ぐるり、と周りを見渡すと、レギュラーメンバーの皆さんは「なんかある?」「んや、特に」と口々に呟いた。侑くん以外はこれといった要望はないらしい。侑くん以外は。
じゃあこれで終わりかな……と資料を閉じようとすると、目の前でスッと右手が上がったのが見えた。
侑くんの双子の片割れ、そして私の恋人である治くんが、授業中では一度だって見たことのない綺麗な挙手をしている。
「?どうしたの」
「Aちゃんのソロはありますか!」
「こら治……」
か、関係なっ!!!と叫ぶこともできず、私は極力冷静に答えた。
「今のところある予定……かな」
「ほんま!?どこ!?」
「今度教えるよ」
「おお……!楽しみやなあ……」
「そこ、イチャイチャしないでくださーい」
角名くんに横から声をかけられ、私はハッとモードを切り替えた。これは、仕事。だめだめ、治くんに甘えちゃ。
「え、ほんま!?治の彼女!?」
しかし、切り替えが効かなかったのはバレー部の方だったらしい。小柄な先輩のその言葉を皮切りに、先輩方がびっくりしたように私のことを見下ろした。
「彼女なんですよ〜、なあAちゃん?」
「あ、はい……」
「えっ、ガチなん!?」
「嘘やと思われとったんですか!?」
いつから付き合っとるん、どっちから告白したん、など質問攻めにされて、私は目を白黒させてしまった。どんなに強豪だとしても彼らも男子高校生である。特に小柄な先輩と……確か、アランくんと呼ばれていた先輩は興味津々のようだった。
「え、あの……」
「お前ら、宮本さん困っとるやろ。その辺にしときや。……すみません」
「いえ、こちらこそ」
きゅ、救世主……!さすが主将というべきだろうか、全てを察して救いの手を差し伸べてくれた北先輩は、私の方を見てふっと笑った。
「吹奏楽部さんにはいつもお世話になってますから、これからもウチの奴と仲良ぉしてくれたら嬉しいです。今日はありがとうございました」
「あっ……はい!こちらこそありがとうございました!」
「北さんにもAちゃんはやりませんからね……!」
「何言うとんねん」
治くんはぎゅう、と私を抱きしめて北先輩にそう言った。凄い度胸だなあと思いもしたけれど、多分度胸というよりも冗談みたいなものなのだろう。
稲荷崎高校の男子バレー部は、今日も今日とて強くて愉快なようだった。
おわり
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時