□番外編 稲荷崎バレー部との一幕 ページ36
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「あ、すみませーん……」
他部活のアウェー感の中にひとりで突入するのはとても緊張する。男子しかいない部活なら尚更だ。しかしいつまでもビクビクしているわけにはいかず、私は意を決してすぐそばに立っていた背の高い男の先輩に声をかけた。
「ん?ええと、どうしました」
「あの、吹奏楽部です。春高の打ち合わせに来たのですが……」
「ああ、そういえば今日やったな……あと数分で今日の練習終わるから、中入って待っとってええですよ」
「ありがとうございます」
さすが三年生、見かけによらず優しいな……と失礼なことを考えながら私は上履きを脱いで体育館の中に足を踏み入れた。
インターハイの全国大会が始まる前に、私たち吹奏楽部とバレー部は応援に関してのちょっとした会議をすることになっている。
うちのバレー部は、ちょっとばかり他よりも要求が多い。例えば、侑くんがサーブをする時に拳を空中で止めると同時に音楽を止めて欲しい、だとか。
最初に聞いた時は「なんじゃそりゃ」とも思ったけれど、それでサービスエースを取った時の爽快感は並ではない……らしい。わからないけど。
「……凄いですね」
「せやろ?」
目の前で繰り広げられているミニゲームでは、色違いのビブスを着た選手たちが六人でネットを挟んで対峙していた。その勢いを見て思わず褒めると、先輩は少し嬉しそうな顔をする。
「…………あ、治くん」
銀髪が揺れるのを視界が捉えて、それを目で追った。
普段は上から見ているけど、こう横から見てみると、さらに凄さがわかるというか。どれだけ跳んでいるのかわかりやすい。
「治のこと、知っとるん?」
「はい。えっと、同じクラスで」
「ああ、なるほど。ほんなら仲ようしたってな」
恋人、と言うのはなんだか気が引けて、私は思わずそう言ってしまった。騙したような気分で申し訳ない。
そうやって少しの間練習を見学していると、主将である北先輩が片付け、と声をかけた。ドリンクを飲みにたくさんの選手たちがコート脇へ移動してくる。
「……あれ、宮本さん。どうしたの?」
おもむろに角名くんが私の隣にやってきて、そう尋ねた。練習が終わったばっかりでいっぱい汗をかいている。
「やっほ、角名くん。今日はアレ、吹部とバレー部の打ち合わせ。すぐ終わるよ」
「あー、アレ今日なのか。宮本さん担当になったんだ」
「うん、仲良いらしいし丁度いいだろって」
「ははは」
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時