警報、その29。 ページ33
.
手を繋いで駅までの道のりを歩いていると、いつも通っている道なのに、今までとはまるで違った景色のように見えた。まず寮暮らしの治くんがこうやって隣にいることが珍しいことで、少し、照れる。
緊張して、手汗が出て来てしまいそう。しかも恋人繋ぎだし。
「なんか、手繋ぐのって変な感じだね」
何気なくそう言うと、治くんは「せやな」と言って笑った。やっぱり彼の手は少し体温が高くて、硬くて、優しい。
私はこの手が、誰よりも好きだ。
「せやけど、俺はずうっとこうしたい思とったよ?」
「……さ、さいですか」
「やから今、サイッコーの気分やねん。むっちゃ嬉しい」
「うん、私も嬉しい。心の中、うわーってなってる」
えへへ、と彼の方を見て笑って見せると、治くんははたと立ち止まった。え、と驚いて私もそれにならって立ち止まると、治くんは私の目線に合わせるように少し上半身を前に倒す。
「……なあ、ええ?」
「えっ……」
「キス」
治くんの顔が、すぐ目の前。
心臓がドッドッと大きく音を立てた。こんなに近くにいたら、治くんにまでこの動揺が伝わってしまいそうで、思わず息を止める。
「……う、うん。いい、よ……んっ」
どうにかそう声を出せば、その唇は治くんのそれに塞がれていた。
柔らかい感触が直に伝わって来て、ぶわっと顔が赤くなるのを感じる。ちゅ、と優しい音を立てて、私の唇を味わうように押し当てて来た。
「お、治くん……」
「ほんまに……かわええな、Aちゃん」
「ん……治くんは、かっこよすぎます……」
ああ、なんてずるいんだろう。甘すぎて、こっちがくらくらしてきそう。
「ほら、行くで」
「うん」
差し伸べて来た彼の手を取って、私は立ち上がった。
ファーストキスは、美味しいお菓子の味。
.
960人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時