警報、その28。 ページ32
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「え、は、え」
「私も好きだよ、その、治くんのこと……」
「え、じょ、じょうだ」
「冗談言ってるように見える?」
まるで壊れかけのおもちゃのように声を震わせる治くんは、まだ目を白黒させている。彼の動揺を見ているとこっちまでなんだか照れて来て、私は思わず俯いた。
沈黙が、二人の間で流れた。その間にも足は動いているわけで、どんどん駅に近づいている。
「……私、ずっと、考えてて」
「…………」
治くんは沈黙で続きを促した。
「治くん、私にいっぱい好きって言うでしょ?その好きっていうの、ずっと友達同士のノリみたいなのだと思ってた……というか、勘違いしたくなくて、そう思い込もうとしてたっていうか」
「……俺はほんまに、Aちゃんのことずっと好きやったで」
「うん。それ、つい最近気がついて。遅すぎるよね、ごめんね」
謝ると、治くんはゆるゆると頭を振った。
治くんは、本当に優しい人だと思う。侑の片割れだしそんなに変わらない、なんて角名くんは言うけれど、自分のことも他人のこともしっかり考えられる人だ。だからこそ、私も。
すると彼も口を開いた。
「……俺は、な」
「うん」
「ずっと、Aちゃんが気づいてくれんの待っとった」
「…………うん、ごめん」
「でも、俺好きやない奴からあんなに言われたら嫌やし。無理してんと違うかなて……でも、もう後には引けんし」
「私、嫌じゃなかったよ、ずっと」
治くんはパッとこちらを見た。驚いたような顔をしてるけど、そんなに意外だったのだろうか。
そう。ずっと、嫌じゃなかった。治くんが朝練後に話しかけてくれて、一緒に席に座るの、一回も嫌だなんて思ったことはない。
「その時に気がつかればよかったんだけどね。……私も、治くんのこと好きだったみたい。だから嫌じゃなかったよ、ずっと、嬉しかった」
「……おん、なら、よかった」
私はすう、と息を吸った。
──この気持ちは、今伝えなきゃ。
「改めて言うけど、好きだよ。毎日お菓子作ってくるのも治くんのためだし、昨日の昼休みもずっと、心の中で治くんのこと呼んでた」
「……俺も、好きや。Aちゃんのこと、ずっと前から」
「ふふ、知ってる」
「ははっ、せやろな」
治くんの身体の前に手を掲げると、彼はするりと自身の手でそれを絡め取った。身長差がかなりあるけれど、所謂恋人繋ぎで。
ああ、好きだなあ。なんて、思ってしまう。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時