警報、その27。 ページ31
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「お待たせ、治くん」
「お、今日は遅かったんやな」
「うん、音楽室の鍵どっかいっちゃって、探すの大変だったの」
例の事件の翌日、治くんと私は駅まで一緒に帰ることになった。治くんは寮暮らしだから、帰るというより送ってもらうという感じだけど。
というのも彼のいつもの心配性で、「アイツ、ストーキングとかしそうやん」とのこと。さすがにそれはないと思う、と言うより、彼は昨日の事件から私に関わらないようになった。
いつも通りの電車、いつも通りの練習、いつも通りの挨拶。それがなんだか、とても嬉しい。
「朝渡せなかったからこれあげる。マドレーヌ久しぶりに作ったなあ」
「うわあ、ありがとお！ほんまお店のみたいやなあ……」
「ありがとう。今日のはめっちゃ美味しくできたから期待してて」
そう言うやいなや、治くんはばくっとマドレーヌにかぶりついた。幸せそうに咀嚼しているその顔は、この瞬間だけ、私のもので。
……ずっと見ていたいと、思ってしまう。
「美味しい？」
「おん、めっちゃ美味い」
「よかった。最近あんまり作れてなかったから久しぶりだね」
「せやなあ」
横内くんにあげるたびに治くんがとんでもなく嫌な顔をするものだから、私は少しだけお菓子作りを中断していた。だから治くんにこうやって渡すのは、たぶん一週間ぶりくらい。
でも、治くんは私にお菓子を作るように催促することは一度もなかった。
ものを作ることの難しさ、大変さを知っているし、きっと私が疲れているのを知っていてくれたから。そういう気遣いも私にとってはすごくすごく嬉しいことで、とても安心してしまう。
幸せそうな治くんを見てニコニコしていると、彼は黒々とした大きな目でじっと私を見つめて来た。よく見ると本当に綺麗な顔をしていて、なんだかドギマギしてしまう。私、自覚してからちょっと変わりすぎなんじゃない？
「な、なに？」
「んや、かわええなあと思て」
「ひえ……そういうところだよ」
「ふはっ、何がやねん」
ああそうだ、忘れてた。治くんってこういう人だった！
こうやってサラッと発言するから私が反応する時間がないし、照れるようなことも何の気なしに言ってくるし、本当の本当に、この人はずるいと思う。
「……ほんま好きやなあ」
だから、私はちょっとだけ、仕返しをすることにしたのだ。
「私も」
してやったり。治くんの大きい目は、みるみるうちにもっと大きくなっていった。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…！😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです！ (4月17日 16時) (
レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜！ (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます！！！！もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました！！どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬咲 | 作成日時：2024年3月26日 19時
