警報、その25。 ページ28
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「……はんっ、ヒーロー登場かいな、おもんな」
吐き捨てたような横内くんのせりふが、何故か私を安心させた。
きっと、そばに治くんがいるから。私を庇うように立った彼は、キッと横内くんを睨みつけている。
「自分、何やったんかわかっとんのか」
声、低い。いつもの治くんの声とは全く違う明らかな“敵意”に、私は身震いした。
私が怒られているわけじゃないのに。
「何って?告白しただけやん、お前に何か言われる筋合いないんやけど」
「ならなんでAちゃんがあんな顔して飛び出してくんねん!何かされたんやろ、なあ」
ぐい、と治くんが私の身体を引き寄せた。横内くんの手とは全く違う、優しい手。触れるだけでほっと心が落ち着く。
「……ごめんなさいって、ちゃんと言ったよ。それに、そんな大したことされてない」
ちょっと怒鳴られたりはしたけど、私も怒鳴り返したからお互い様だ。それに治くんに伝えてしまったらきっと、彼は衝動を抑えられない。
──そう、そうだ。横内くんを庇ったのは、気持ち悪い偽善なんかじゃない。
バレー部も吹奏楽部も大会を控えてるのに、暴力沙汰になんてさせたていいわけがないのだ。そうしたら、治くんも私も部活に出れなくなってしまう。いや、最悪私はどうだっていい、吹奏楽は高校でやめるって決まってるし。
…………でも。
何がなんでも、治くんだけは守る。
「だから、もう戻ろう。ね?授業始まっちゃうよ」
ぽん、と治くんの肩を叩いた。横内くんを睨みつけていたその目が途端に柔らかくなって、こちらを見る。
「……せやな」
「ふはっ、惚れた女の前やといい子ちゃんなんやな」
ああ、これは、まずい。治くんの目が再度曇った。どうしてあの人は火に油を注ぐようなことばっかりするんだろう、負け惜しみにしても酷すぎる。
「治くん……」
「当たり前やろ。惚れた子の前でカッコつけたいのなんか普通やん。……お前にもわかるはずやけどなあ」
なあ、強引男?と、治くんは首をかしげながら言った。
「もう行くで。二度とAちゃんに関わんな」
ぐいっと手を引かれて、私は治くんの後に続いて歩き出した。歩幅を合わせてくれるのも、腕を握る手つきが優しいのも、全部横内くんとは比べものにならなくて。
嬉しいと、思ってしまう。
「……ありがとう、治くん」
「Aちゃんがおらんかったら一発入れとったわ」
「それ冗談?」
「さあ、どうやろなあ」
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時