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警報、その24。 ページ27





何度彼に好きと言われても、私は好きとは返さなかった。というより、返せなかったのだ。自分のその気持ちに自信がなかったから、友達だと思い込んでいる方が楽だったから。

だって治くんは私なんかよりも何倍も有名で、全国にファンがいて、運動神経が良くて背が高くて、みんなの注目の的なのだ。
彼の好きが本心なのかわからないし、それに対して真面目に取り合うことを、私はずっと怖がって避けていた。




「……なんか言ったらどうや」


「人を下げて相対的に自分をよく見せようとする人は、嫌いです。相手が治くんじゃなくても嫌だけど、治くんだともっと嫌。これが私の答えだからもう帰して」




治くんは、ずっと、一年生の時からただ真っ直ぐ私の方だけを見てくれた。その時は、自分にはそれを返せるだけの気持ちがなかった。度胸もなかった。



でも、今は違う。ちゃんと自分で考えたから、自分で、結論を出したから。







「治くんのことが好きだよ。だから無理、付き合えない。ごめんね」






私の作ったお菓子を本当に美味しそうに食べてくれる時の笑顔も

休み時間のたびにいつも話しかけてくれて、笑わせてくれるところも

私の音色を、一生懸命聴こうとしてくれている姿勢も



誰にも、何にも、損なわせなくない。邪魔させたくない。







──これを、きっと、恋心という。






すると横内くんはつかつかと歩み寄ってきて、私の胸ぐらに手をかけた。視界が揺れる。


「っ、お前ほんまにっ……」

「何、好きな人いるのかって聞いたのは横内くんじゃん」
 
「治より俺の方が何倍もええやろ、治より、俺のがアンタのこと」

「だから、そうやって他人を貶めるところが嫌なの!」


怖さよりも、怒り。もう何も彼を怖がる理由はない。
キッと彼を睨みつけると、彼は手に力を込めた。ぐわん、ともう一度大きく視界が揺れる。



「離してよっ」



ドン、と彼を押し退けて、私は隙を見てもう一方の扉に手をかけた。よかった、開いてる。


慌てて飛び出した。一刻も早くここから出たくて、一歩目を踏み出した、途端。



「おわっ!?」

「えっ……あ」



見たかった銀髪が、ひとり。少し髪が乱れているが、ぶつかってよろけた私をすんでのところで受け止めてくれた。




「…………治くん」




彼の名前を呼ぶと、治くんはへなへなと座り込んだ。「見つかってよかったあ……」と、心底ホッとしたようにつぶやいて。




警報、その25。→←警報、その23。



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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時

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