警報、その23。 ページ26
．
「……Aちゃん、俺アンタのこと好きや」
空き教室に連れてこられてすぐの彼の告白に、私は微塵も驚かなかった。
それどころか、やっぱりそうか……なんて思っている自分がいることに驚いていた。そう、そうだよな、あんなにあからさまにされて察するなと言う方が無理な話で。
生憎私は鈍感でもなんでもないからわかっちゃうの、こういうこと。
「……そ、っか。でもごめん、付き合えない」
だから、私の返事も決まっている。きっぱりと何の混じり気もない口調で、私はノーと告げた。思わせぶりというのは時に毒になる、ここはしっかりとけじめをつけた方がいい。
……でも、彼、横内くんは、なぜかがっかりしたような表情を見せることはなかった。
「お試しとか、どない？」
「…………は？」
「よくあるやん、お試しで付き合ってみよーってやつ。今彼氏おらんのやろ？ちょっとくらい男と遊んでみてもええんやない？な？」
絶句した。遊ぶって何、何を考えてそんなこと言ってるの。彼氏いないから何、彼氏欲しいだなんて一言も言ったことないんだけど。
こんなに酷い性格だなんて思わなかった。真摯に向き合ってちゃんとお断りしたのにまだしがみついてくるの？遊ぶとか、お付き合いのことをそういうふうに考えてるの？
「……いや、私好きな人としか付き合いたくないから……手繋ぐとかも、無理だし……一緒に帰るのも出来ないよ。この際言うけど、恋愛として見てないから」
「そのお試しの中で好きになってくれればええから」
「ならない！ごめん、もう諦めて」
もういい、いい加減にして。そんな気持ちを込めて、思わず大きい声が出た。嗚呼、私、今日多分半年ぶんくらい怒ってる。他人に声を荒げたことなんて一度もなかったのに。
やだ、帰りたい。帰りたいのにドアは彼の身体に塞がれている。怖い、嫌だ。
助けて、治くん──
「……なんやAちゃん、好きな奴でもおるん？…………まさか、治とか言わへんやろな」
どきん。
心臓が跳ねた。よく聞かれる質問だというのに何故か頭の中がぐるぐると渦巻いた。それは今まさに、彼のことを考えていたから。
あれ、なんで私、こんな時に治くんのことを思い浮かべてるんだろう。あの人とは友達で、仲が良くて、でもちょっと、いやだいぶ私のことを好いてくれて、私も、それが嫌じゃなくて。
好き。その感情がくっきりと線を結ぶのを、私はずっと恐れていた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 960人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…！😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです！ (4月17日 16時) (
レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜！ (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます！！！！もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました！！どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬咲 | 作成日時：2024年3月26日 19時
