警報、その20。 ページ23
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治くんは、いつも何かしら食べている。
朝のホームルーム前、休み時間に昼休みはもちろん、ひどい時は授業中までこっそりお菓子を口に放り込んでたり。
それが、私が作ったお菓子だった時は、なんだか嬉しい喜持ちになったりする。
「あ、サムまーた美味そうなん食っとる!」
「お前にはやらんで」
「ハァ!?ケチやなほんま!」
「お前に言われたないわ、人格ポンコツ」
今日は私が作ってきたマドレーヌを食べている間に侑くんが凸ってきたらしく、うっとおしそうに手をしっしっとやっている。
人格ポンコツとはまた言い得て妙な、と思ってしまう私も、大概治くんの態度につられてしまっているのだろう。
「なあなあAちゃん、俺にもちょーだい」
「あ、いいよ。丁度ひとつ余ってるし……」
「あかん」
「お前に口出しされる筋合いないわ!サムは黙っとけ」
ああ、また喧嘩。
私のお菓子を気に入ってくれるのは勿論嬉しいことなんだけど、これで二人が喧嘩してしまうことが多くて素直に喜びにくいというか。
関西人として私をめぐって争わないで!なんてボケてみようかともおもったけれど、私をめぐっているわけじゃないのでやめた。めぐられているのはお菓子だ。
「むしろ余ったら困るし食べていいよ?」
差し出せば、治くんが全身でガードするような体勢になる。侑くんに蹴られていてもお構いなしだ。
あほツム、くそサム、なんて双子の暴言の応酬が目の前で繰り出された。今となっては慣れたものだけど、180以上の背の男ふたりが大喧嘩だなんて、目の前で見るのには迫力がありすぎる。
このお菓子、侑くんに渡しちゃったらますます面倒なことになるかな……とぼんやり思っていると、視界の端にちょこんと誰かの影。
見上げると、私の机のそばにはクラスメイトの男の子が立っていた。確か、バスケ部。
「これ、侑にやらんなら俺がもろてもええ?」
おや。普段話す方でもないから、こんなことを言われるのは意外で驚いた。前は隣の席でまあまあ話していたけど、席が離れてからはからっきしだったから。
「えっ……ああいいよ、このまま内緒で持っていっちゃえ」
「ふははっ、あんがとさん」
笑ってからその子は席に戻って行く。
「──ごめん、侑くん。今さっき売り切れました」
てへ、と真顔で付け足して見せると、絶賛殴り合いをしていた二人はぴたりと動きを止めて、片方は嘆き、もう片方は勝ったようにガッツポーズをしたのだった、
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時