警報、その19。 ページ22
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「治くんって、ファンの子苦手なの?」
「んえ、なんで?」
「いや、なんとなくそうかなって……」
さっきの会話を聞かれているとバレるのはなんとなく恥ずかしかったので、少しだけぼかしてそう尋ねてみた。今日に限らず今までも何度かは疑問に思ったことがあったので、この際に聞いてみようと思ったのだ。
「んや、基本苦手やないけど……たまにしつこすぎる子おんねん、それは嫌」
「ああ、確かに……」
「さっきもAちゃん寝てた時やけど10分近く捕まってん。ほんまにうんざりして」
「お疲れ様」
人気者だもんね、と笑うと、良いもんでもないで、と返す治くん。その目には少し疲労が表れていて、沢山の人に好かれるのも大変なんだなと察しがつく。
……告白とかも、いっぱいされるんだろうな。
「でも、好きな人に振り向いて欲しくてああいうことやっちゃうんだろうね。しつこいのは良くないけど……可愛い子だったなあ」
「え?」
「あ」
私は思わず口をつぐんだ。寝てたのにさっきの子のことを知っているような口ぶりは、流石に不自然すぎた。治くんにも気づかれたようだ。
私は弁明するようにあわあわと手を振る。
「ご、ごめん、ちょっと起きてた。顔上げるの気まずくて」
「謝らんでもええって、あいつらが悪いし」
「そう?」
「それにAちゃんの方がかわええよ?」
「だから、そーゆーとこ……!」
私は心の中で深く息を吐いた。サラッとそういうことを言う治くんに、私は振り回されっぱなしだ。どうしてこんなことを言えちゃうんだろう、やっぱりイケメンだからなのかな。
──やめて、心臓。ドキドキ音を立てないで。まるで治くんのことを好きみたいだから。
「……全部勘違いだよ」
「え、何が!?」
「あ、いやこっちの話!」
独り言として言葉にしないと、この感情に名前がついてしまいそうで怖い。あんなに今まで否定してきて、ノリだからって軽くあしらってきて、急に本気として捉えるのも変な話だ。
治くんは、今までと何にも変わってない。可愛いも結婚しても、何度も聞いたしなんとも思わなかったじゃないか。
変わっているのは、私の心だ。
「……治くんって、本当にずるいね、それに酷い」
「やから、ほんまに何の話!?」
「んーん、全部こっちの話」
心が、侵食されてゆく。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時