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side 角名
「とってもずるいと思います、あの人」
そう言いながらズーと音を立てて紙パックジュースを飲み干したのは、当然と言うべきか宮本さんだ。恨めしげな顔をしながら話題にあげた“あの人”というのは、紛れもなく治のことだろう。
「可愛いとか好きとかさ、そんなこと言われたらドキッとしちゃうに決まってるじゃん!」
平常心でいたいのに、と嘆いている彼女はそう言って机に突っ伏した。俺の前ではかなりその平常心が崩れているが良いのだろうか。治にばれなければいいって感じなのかな。
ああもう、どうしてこんな両方面から惚気めいたものを聞かされるはめになってしまったのだろう。面白がって宮本さんと仲良くなったのが運の尽きだ。
「宮本さんってさ、俺が思ってたよりずっと治のこと好きだよね」
「え?どういうこと」
「その言葉のままの意味だけど」
ええ、と宮本さんは信じられないような顔をして俺を見た。くりくりと大きい黒目はどこか治に似ている。吸い込まれそうだ、とぼんやり思った。
「ドキドキイコール好きみたいな方程式ってあるけど、実際あんな風に褒められたらびっくりするしドキッとしない?」
「えー、別に」
「ちぇっ、そりゃ角名くんは言われ慣れてるか。モテモテだもんね」
「それほどでも」
「嫌味か」
そんなことを言うのなら宮本さんは俺が治と同じように褒めれば同じような反応をするのかと言ったら、それはまた別の話のように思えた。急に言われたことの驚きからくるドキドキはあるだろうけど、治に対してのそれは、きっと。
……きっと、彼女は好きだからそうなるのだろう。本人の自覚がどうなのかはわからないけど。
「私はね、治くんのファンに刺されたくないんだ」
「まあ誰だってそうだろうね」
「だから友達としての距離感は保とうと頑張ってたのに、治くんすぐそれぶち壊してくるし」
「宮本さんに対してはパーソナルスペースぶっ壊れてるからね」
「私も、なんかそれにつられ始めちゃって」
「あらら」
「…………都合いい、って思う?」
そう言って俺を見上げた宮本さん。治のフィルターを抜きにしても、整った顔はしている。日本美人というか、変に飾っていない素朴な感じ。
治は、きっと彼女のこういうところが好きなのだろう。性格も無理に飾り気がなく、さっぱりとしていて、それでいて接しやすい感じ。
「別に?そんなもんでしょ、人間なんて」
彼の恋の行方や、いかに。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時