警報、その15。 ページ17
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「……失望、て?」
「あ、全然変な意味じゃなくてね!あの……治くんって私に沢山話しかけてくれるけど、来年受験生だしクラス離れるかもしれないし、そしたらあんまり作ってあげられないなと思って……」
「…………」
「だから、作れなくても今まで通り仲良く?してくれるかな、とか……思ったりして……」
こわい。気のせいじゃなければ、治くんの顔がとっても怖い。
どうして?何かまずいことでも言った?一歩間違えれば足がすくんでしまうほど怖い顔をしてるんだけど……きっと私じゃない女の子がこんな顔をされたら泣いちゃうよ。
「お、治くん……?」
「……んな軽い男やないで、俺は」
「え」
ようやく口を開いた彼は、いつもより数トーン低い声で唸るようにそう言った。ただの恐怖じゃない。私の心ごと呑まれるような気がして、思わず息を飲む。
変なこと言ってごめんねと言おうと口を開きかけると、治くんは私の手の上に自身の手を置いた。ゴツゴツした手が触れて、肩が一瞬跳ねる。
「……俺はAちゃんが好きなんやもん」
せやからそんなん関係ない、と、彼はきっぱりと言い切った。
心臓が、どきんと大きく鳴った。鼓動が速い。
なに、私もしかしてドキドキしてるの、あの治くんに。いつも私に好きって言ってたじゃん、何も変わらないのに、変わらないはずなのに。
「……そっ、か。ごめんね変なこと聞いて。そうだよね、うん」
わかりやすく頷いて見せて、私は微笑んだ。そうしないと何か別の表情が出てきてしまいそうで怖かったから。
「まあAちゃんの作るスイーツむっちゃ美味いから、そら貰えるんなら喜んで貰うけどな!」
「ん、ありがとう。ということでこれあげる」
「アイシングクッキー!?すっご……」
用意していた物を取り出すと、治くんの目がより一層大きくなった。可愛い。
ここまで喜んでくれるのなんて生まれて初めてだから、何かあげたくなっちゃうんだよなあ。餌付けとか言われても仕方ないかもしれないけど、治くんがその気にさせるのが上手いのか悪い。
「……でも、治くんが喜んでくれるならこれからも作るよ、私」
「ほんまに!?」
「うん」
頷くと、治くんはラッピングをはがすために私の手の上に置いていた手を取り去った。体温が、手の感触がやけに残っていて、私は思わず自分の手を握りしめた。
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冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時