警報、その11。 ページ13
.
男子バレー部の練習試合当日、私は約束通り体育館前にやって来ていた。少し早めに来ていたはずだけど、周りにはそれなりの数の女の子たち。みんなきゃらきゃらと笑いながら宮兄弟かっこいいよねえ、なんて話をしていて、男子バレー部の人気ぶりをしかと思い知らされたような気分になる。
少し経つと体育館の扉が開放されて、その場にいた子たちは流れるように中へと誘導されていった。慣れたように中に入るみんなに続いて、私もギャラリーまで上っていこうとしたところで、
「あ、Aちゃん!」
と、声をかけられた。聞き慣れた男性の声、思い当たる人物なんて一人しかいない。私は人の波からどうにか抜け出して、駆け寄ってきた彼と顔を合わせた。
「治くん、今日頑張ってね」
「おん、来てくれてありがとぉな!」
にこにこ、嬉しそうな笑みを浮かべる治くんの顔には試合前の緊張感などは微塵も存在していないようだった。練習試合とはいえ、さすが強豪というべきか、かなりの余裕だ。
私も思わず笑顔を返すと、治くんの後方かもっと高い影がやってきた。よく見ると、ダークブラウンの髪を少し跳ねさせたクラスメイトの角名くん。はい、と治くんに赤色のビブスを渡した後に私に気がついたようで、驚いたような顔をする。
「あれ、宮本さんじゃん。練習試合来るなんて珍しい」
「治くんに誘ってもらったの、今日は午前中だけオフだからたまたま来れたんだ。今日角名くんも出るんでしょ?頑張ってね」
「あかん、Aちゃんは俺だけ見とるって約束したやんか」
「それ治だけにある記憶なんじゃない?」
私の肩に顔を乗せてぶーたれる治くんを見て、角名くんは目を細めてけらけらと面白そうに笑った。初対面の時は怖そうな印象だったものの、知ってみれば案外よく笑う人だ。
「出来るだけ治くんのこと見てるよ、出来るだけ」
「ほら、宮本さんも保険かけはじめてるじゃん」
「やってAちゃんに見られたらみんな恋しちゃうやんか」
「しないよ」
治くんのこういう冗談にももう慣れたものである。見られただけで恋しちゃうなんて、そんなの1000年に1度の奇跡と言われるあの女優さんくらいしか出来ないよ普通!
「おーい、治、角名!」
「あ、ほら二人とも呼ばれてるよ。私ももう上行くね」
私を見かねて助け舟を出してくれた銀島に軽く手を振って、私は今度こそギャラリーへと上った。シューズが床に擦れる音がする。
試合開始、だ。
.
960人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時