検索窓
今日:269 hit、昨日:794 hit、合計:125,619 hit

警報、その9。 ページ11






治くんのことが好きなのか、とは、2年生になってから今まで以上に尋ねられるようになった。

もしくは、治くんにあんなに好かれてるのになんで平常心でいられるの?とか、治くんってアンタのこと好きなの?とか。一番最後の質問に限っては、私に聞かれても困るけど。


「……そんなの、私が知りたいんだけどなあ……」


きっかけというきっかけなんて覚えていない。一年生の時に隣の席になって少しずつ話すようになり、二年生になると、気がついたら前日に作ったお菓子を彼にあげることが日課のようになっていた。

銀島が言った通り、私は今まで誰かのためにそんなことをしたことはない。私は誰もいない廊下をひとり歩きながら考える。


「好き?好き……なのか……?うーん……」

「何が好きなん?」

「わあっ!?」


誰もいないとたかを括っていた私に突然声をかけてきたのは、まあ当然というべきか、彼で。


「お、治くん、おどかさないでよ……」


名前を呼べばにかっと眩しい笑みを浮かべてくれる治くんは、私の隣に並んだ。私の頭の高さは、彼の頭の高さだ。改めて身長差を実感しながらも足は止めずに歩き続ける。

侑くんに比べれば無愛想だなんて言われがちな治くんがどうしてこんなに私に構うのか、私はまだわからないままでいた。無愛想というか、侑くんと違って営業スマイルをしないからなんだろうけど。話しやすいので言ったら私的には圧倒的に治くんだ。


「治くんって私に沢山好きって言うけど実際どうなんだろう……みたいな?」


私は少しぼかしつつもそう答えた。嘘は言っていない、私にとってそれは気になるところだから。



「んー?俺はいつでも本気やで。Aちゃんがお嫁さんに来てくれたらなあと思とるよ」

「ふふっ、お付き合いとかすっとばしちゃうんだね」



お嫁さんなんて遠い未来のことすぎて、まるで現実味がわかなかった。

しかし、そんな私の返事を聞いた治くんは目を輝かせて、



「えっ、つまりそれはお付き合いしてくれるという」

「そこまで言ってないけど……」

「気ぃ変わったら言ってな」

「うん」


適当に頷いてから、私はふと思った。


……仮に今までの全てが冗談なんかではなかったら、そうしたら、私はとんでもなく失礼なことをやらかしてしまっているのではないだろうか。


治くんの顔を見ればいつも通りのぽややんとした少し抜けた表情がそこにあった。彼の真意はいつもわからない。



警報、その10。→←警報、その8。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (253 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
960人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

冬咲(プロフ) - いすみさん» そんな嬉しいお言葉をいただけるとは…!😭✨沢山きゅんきゅんしてくださって本当に嬉しいです! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(プロフ) - 黒尾ファンさん» 完結まで読んでくださりありがとうございました🥲💖違う作品も是非楽しんでくださいませ〜! (4月17日 16時) (レス) id: 17b4672103 (このIDを非表示/違反報告)
いすみ(プロフ) - まずは完結おめでとうございます!!!!もう一周したいと思います。まじでその辺の恋愛漫画よりキュンキュンしました。素敵すぎる作品をありがとうございます🥲❤️❤️ガチでLOVE。 (4月16日 22時) (レス) @page34 id: b9d4cbed9d (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - あまりにも、なまってもうて、すんまへん、、、。😭 (4月15日 21時) (レス) id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 完結おめでとうございます。応援してました!!どうも、黒尾ファンです。この作品結構の間見てきたんやけど最高やね♡大好きやわ。違う作品も見てみるけん、これからも頑張り〜や。また一から読みますさかい。 (4月15日 21時) (レス) @page34 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冬咲 | 作成日時:2024年3月26日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。