chocolateのゆくえ《ars》 (ページ5)

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「……智くん」

「なんだよ」

「………翔ちゃん、ハンカチ持ってった」

「ん…？おう、持ってったな」

「……失くしたって言ってたのに」

「今気にするのそこなんか」

「だって、あんなとこに忘れるかな」

「さぁ……」

ようやく智くんは最後の生チョコを口に放り込んだ。

義理チョコが詰まった小さな青い箱が空になる。

吹けば飛びそうなそれを、智くんが持ち上げた。

「とにかく、お前はそれ持って帰れよ。翔くん追いかけな」

「でも……」

「本命チョコなんて好きな人に渡さなきゃ意味な、……あ」

つぶしたコーヒー牛乳のパックと空になった義理チョコの箱。

二つを片手で掴み上げて立ち上がった智くんが急にそんな間抜けな声を出して固まる。

今度こそお化けでも出たのかと思ったけど翔ちゃんが出てった教室には相変わらず日直だった私と智くんしか残ってない。

「思い出した。あのハンカチ、翔くんあの女に貸してたわ」

「はい？」

「そうだ思い出した。昨日の昼休みに翔くんと相葉ちゃんがあの女に呼ばれてたろ。それで掲示の張り出し手伝わされてた時に翔くんがあのハンカチ貸してたかも。食堂行くときに見た気がする」

「………なぜにそんな重要なこと黙ってたの」

「黙ってたんじゃなくて忘れてたんだって。通りかかっただけだし」

あ、ちょっと智くん逃げないでよ。

私から離れるように智くんはゴミ箱に一目散。

手にした空のパックと箱をぽいと投げ捨てた。

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