永久的ガトーショコラ【N】 ページ14
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それはとても中途半端で、正しくはない距離感だろう。
幸いだったことは、それを世間がどんな風に見ようが当事者である俺もあいつもそんなことを気にもしない性分だったことだ。
「二宮先輩、受け取ってください」
目の前で顔を真っ赤にしてちょっとうつむいている会社の後輩は最近はやりの若手女優に似てると同僚たちの間で話題だ。
よく手入れされたセミロングの落ち着いた茶髪は艶やかで触れたらたぶん指どおりがよくて気持ち良いんだろう。
すらりとした白い足を撫で上げるのもたぶん悪くない。
男として、それなりに興味もあるけれど。
「……悪いな、俺そういうの受け取ってないんだ」
困ったように笑って断るのも、無下にするのも悪いからと優しく受け取るのも、やろうと思えば俺にはできる。
傷つけないような言葉選びで、かつ今後の業務に影響が出ないような言い回しで。
うまいことこの場を切り抜けるだけならいくらでも方法はある。
だけどどこかの誰かみたいに馬鹿正直にこんな言い方で本命チョコを蹴り飛ばすのは、やはりどこかの誰かの馬鹿みたいにまっすぐな性格にほだされたに違いない。
恋人が変わると趣味趣向までがらりと変わる女がいるけれど、俺のこれはそれに近しいものになるのだろうか。
「好きな方がいるんですか？」
「……俺にさ、毎年ガトーショコラをくれるやつがいるんだけどさ」
はじめはただの安物のキットで作ったやつで。
正直美味しいわけじゃなかったけど。
「そいつのガトーショコラを、毎年受け取るって決めてるんだよね…ごめんね」
ここでもまた馬鹿正直に理由を述べるあたりがなんとも俺らしくなくて。
ああホント、イライラするな。
どうして俺の人生はこんなにもあいつに振り回されなきゃいけなくなったんだ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月14日 18時
