-5- ページ25
.
「でもなんでウイスキーボンボン？」
「なんとなくです。大野さんっぽいかなって」
「そうかぁ？」
「何となくですから」
甘い砂糖の殻に詰められた大人味の洋酒。
それを微塵も感じさせないチョコレートのコーティング。
ほら、大野さんにそっくりだ。
可愛い見た目して中身はひどく大人で私なんかひとつで酔ってしまうに違いない。
誤魔化す様に煙草に口をつける私は大人なのかそうではないのか難しいところだ。
ふうと吐き出した煙が視界をけぶらせる。
灰皿に一度煙草を押し付けると、その横に大野さんがウイスキーボンボンの入った箱を置いた。
「なぁAちゃん」
「はい、んっ」
突然口にまあるいチョコが入り込んできて反応が遅れた。
「おすそわけだ」
「んん…っ」
そのすきにあっという間に唇がふさがれた。
抵抗する間もなく深く口付けられる。
閉じたそこをこじ開けて入り込んだ舌が生き物のようにうごめいてウイスキーボンボンの甘ったるい殻ごとどこまでも溶かしてしまうようだ。
よろけて背中がテーブルにぶつかってガンと鈍い音を立てる。
とっさに手をついた場所には灰皿がなかった。
手から煙草が転がるように逃げて行った。
「んん……ふ、っんう…」
こんな時でも大野さんはテーブルの灰皿を丁寧に除けたんだろうに違いない。
テーブルに手を押さえつけられたままではそれを確認することもできないけれど。
「…っふ、んん…は、ん…っ」
息をすることすら許されない。
くぐもった声が鼻に抜けると、同時に口の中で殻が溶け堕ちた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月14日 18時
