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次に、ゴーストの花嫁がシュラウドくんを人質にとった大騒動にて。
「〜という事になってしまいまして」
「そ、それで……俺にプロポーズに行けとおっしゃる……んですよね」
「そうなりますね」
「多くの生徒が犠牲になってるんですよね……。俺だけ行かないわけにも……。分かりました。善処します」
作戦に協力しない面々もいる中、それを伝えず。シャンディラくんの思うプロポーズの言葉を一度でも聞いてみたくて、駄目元で誘ったら渋々だが承諾を頂いた。
一足早く正装に着替えてもらった四名の生徒を待機させていた場所に彼を連れていくと、
「えっ、ドローレ先輩にも行かせるんですか」
「ええ」
第一に驚かれ、第二に私が非難を浴びた。
「それは如何なものかと! ドローレが求婚に行っては、本当に惚れられてしまうかもしれないんですよ。そうなったら今度はドローレが冥界に……!」
「その前に、ドローレ先輩が女性のもとに求婚しに行くなんて……見たくない、です……」
「ふふ、それじゃあ私と結婚しようか、
「は?! 先輩はオレの嫁になるんですけど!」
「だっ、駄目! 俺……じゃなくて、僕と結婚するんだから」
「結婚の前に、交際するのが普通なんじゃないのかい? そうだろうドローレ」
ヒートアップした口論に、彼は苦虫を噛み潰したような表情で後退りした。「そんな冗談に俺を巻き込まないで」と穏便に取り繕う彼が必死すぎて可哀想になる。
「…………学園長、俺やっぱり無理です……」
私の外套に隠れるか弱い小動物のような仕草で、彼はそっと私に耳打ちをした。その小さな声に庇護欲がそそられる。
「シャンディラくん」
「はい……」
「帰りましょうか」
「はい…………」
すがるものが私しかない最高な状況。小さくなった肩に優しく手を置くと、彼は私の爪飾りに指を掛けて浅い息をした。
恐怖が安堵に変わっていくその行程に私が介入しているのだと自覚をする度に貴方しか見えなくなっていく。ジワジワと、際限なく生まれる愛情が私を蝕んでしまっているのは分かっていたが、もう止められなかった。
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