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絶対変に思われている、と絶望に焦る俺だったが、
「スカイレース好き？」
どことなく嬉しそうに弾んだ声の質問に、俺は曇らせた顔をガバッと上げる。驚いたような、それでいて嬉しそうな表情に俺の心の曇天は晴れる。
「はいっ！」
「そっか、こんな近くに同士っているんだね。嬉しい……デュースもスカイレース好きだったんだ」
「え？ 僕の名前、知ってたんですか？」
「あ〜、えっと、聞いたことあったから」
「そうだったんだ……」
発覚した事実に顔が熱くなっていく。知られていないと思っていたのは俺だけだったんだ。噂で聞いた風な言い方だが、どんな噂で俺の名を知っているんだろうか。少し胸がざわついた。
「それより俺、スカイレースの話出来る友達少なくて寂しかったんだ。そんなにマイナーじゃないと思うんだけど、皆あんまり興味ないみたいで。だから、デュースと話せるの嬉しい」
「あ、それなら、っ……」
エペルも興味あるみたいです、と言いかけたが俺は言葉を飲み込んだ。
「ん？」
「あ、いえ、何でもないです。ところで、先輩の推し選手とかいるんですか？」
「いるよ。今はヴァネーロ・フォン・シュヴィッツ選手が一番」
あ、と言葉を切った先輩は腕に抱えていたブルゾンを広げ、倒れた襟元を立てて見せた。
「これ、小さいけど、ヴァネーロ選手のバッジ付けてるんだ。あんまり派手なの付けると先生に叱られるかもしれないから、一個だけ、ね」
ライトミントグリーンのベースカラーに、チョコペンで流し書きされたようなサインが入った缶バッジだ。それを大切そうに見つめ、彼は再びブルゾンを両手に抱える。
「本当は大きいのも含めて3つくらい付けたいくらいなんだけど、スカイレース知らない人から調子乗るなって反感買ったら嫌でしょ。だから一つだけ、こっそりね」
悪戯な微笑みが俺を直視している。ほぼ同じ身長なのもあり目線が近い。いつになく楽しそうな先輩の純真さが心臓を直に攻撃してくるようだ。
ドキドキと高鳴る鼓動が聞こえていそうで怖かった。
「じ、実は僕も、ヴァネーロ選手に注目してて！ 明後日のレースもリアタイで観るつもりなんです」
「あ、それ俺も観るよ」
「あ、あのっ！良ければ」
俺は声を張り上げた。だが、その後が続かない。
先輩が俺を再び不思議そうに見詰めている。
一か八か、スカイレーサーが殺伐としたインコースに攻め込むように俺は勝負に出た。
「一緒に中継観ませんか！？」
続く (更新停止中)
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