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11-3 ページ16

「……ハッ、こんな事したって」


何かに操られたような心地だったが、正気に戻れば、白に紛れチョコレートを被った一輪がどうにも異質に浮いていて思わず嗤ってしまった。ただ塗り忘れられた存在をシャンディラ先輩に重ねるなんて失礼ではないか。薔薇はすぐ白に塗りなおしてやった。可哀そうだもんな、独りぼっちなんて。
茶色いインクをひた隠して、俺は今来た道を辿って戻った。


「あっ」


メインの石畳に着くと、丁度嵩張ったビニール袋を二つ提げたクローバー先輩が寮に帰るところに遭遇した。


「先輩、お帰りなさい」

「ああデュースか。ただいま」

「重そうですね、片方持ちましょうか」

「いや、これくらい大丈夫だ。量にしては軽いからな。それよりデュース、何処か行くのか?」


先輩はわざわざ足を止めて問う。宛はありません、とは言いにくかった。


「俺も丁度、購買へ行こうと思って」


この際何か買っていこうか。消耗品でも生活用品でも。ああ、そういえば部活の時に好んで飲むスポーツドリンクのストックが減ってきたんだったか。丁度良い、買いに行こう。


「そうか。あ、そういえばさっき、サムさんの所にドローレも来ててな、ホワイトチョコの箱をダースで買ってたんだ」

「12個も?」

「はは、面白い奴だよな」


白いチョコレート。茶色くしたバラを白く塗り潰したあの光景が目の前に思い出される。先輩はホワイトチョコの方が好きなのだろうか。それだとしたら、最初から白く塗ってやれば良かったと無意義な事をぼんやりと思う。


「あ、すまない、引き留めてしまったな。デュース、それじゃあな」

「っ、はい、それでは」


あのバラは何度塗り重ねられてきたのだろう、と道中考えていた。真っ新な本当の色は赤か白かはたまた別の色なのか。どうでもいい事をずっと考えていた。
それ故、なんだかすっかり気分は晴れており、購買に着いた時には既に気分転換という目的は果たされていた。


「Hey、小鬼ちゃん!いらっしゃい」


明るい声で俺を迎えたおどけた仕草の店主。軽く返してスポーツドリンクを購入しようとした俺だったが、


「サムさん、ホワイトチョコありますか」


口を突いて出たのは普段あまり口にしない類の甘い菓子だった。あまりの意外さに俺が驚いた。

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作者名:IDee | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年12月20日 22時

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