〜ドロ甘スペードチョコレート〜 -11 ページ14
「せ、先輩、俺っ……！ッ、ずっと前から好きでした！付き合ってください……！」
俺は目の前の麗しいドローレ先輩、もとい、彼の写真(盗撮)を顔の前に掲げたエースに告白の練習を行っていた。俺の情けなく震える声が寮の部屋に響き渡る。
「ん〜……50点」
「ま、まあまあ高くないか？！」
「嬉しそうにすんな！ 低いわ！ テストと一緒だと思うなよ。いやテストにしても低いけどね？！」
喜びを一蹴するエースの手厳しい評価に、俺は面を食らって肩を落とした。そうなのか、50点は低いのか。
まず殆んど先輩の顔見れてねえじゃん、と尤もな指摘をされ俺は俯く。だって仕方ないだろ。心の中で言い訳をしてそろそろと視線を上げれば、図書館の一面の本棚を背に、真面目な顔で勉強に集中する先輩の眩しい横顔があるのだ。直視なんて出来るか。
見るだけで吸い込まれてしまいそうなんだ。茶色い涼やかな瞳に、胸は熱く鳴る。
「お前さ、そんなんでドローレ先輩にマジで告白出来んの？」
「出来ないから練習してるんだ！」
「あっそ。ま、協力くらいはするけどさ。応援はしねえから」
「お前の気持ちは分かってる。でも僕は……」
「1％に賭けるってか？」
「い、1％……」
ごめんなさいと心の中で何度も繰り返し唱えシャッターを押し奇跡的に上手く撮れた盗撮写真をまじまじと見つめたエースは、熱の籠った冷ややかな目をして望みない事を言う。協力する、とは言ったものだが、彼が俺に暗に訴える言葉は諦めろの一言だった。
自分だって無謀な恋なのは重々承知の上だ。でも、少しくらい努力を積み重ねた者だけが得られる期待や夢くらい見たって良いだろう。
お前よりも容量の悪い俺だ。盲目的になりがちだし、一度決めたら猛進してしまう癖がある。だから高い場所に咲く花へ手を伸ばして、思い切り火傷を負うかもしれない。でも、一度も挑戦せずに指を咥えて見ているよりも、よっぽど良いと思うんだ。
「そもそもお前、先輩と接点ねえじゃん。絶対認知されてねえって」
「それは……これから段階を踏んでだな」
「無計画ってわけね」
「グッ……」
俺の弱点に的確な針を刺すエース。そう、その問題だけは努力だけではどうにもならないのだ。どれだけ頭を悩ましても最善策は浮かばない。話しかける勇気もあったもんじゃない。そもそもあの人の顔すら見られないんだから。
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