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「『友達が出来ますように』って」。
星送りの時、私だけに教えてくれた言葉を思い出す。
「……救われる日は来ますよ」
「本当ですか？ 俺はもう……そう思えないかもしれないです」
すっと消えていった炎の影をぼんやりと見つめ、シャンディラくんは首を横に振った。弱音を吐く姿は弱々しく、魔法の炎のように、目を離せばふっと消えていってしまうんじゃないかと思うほどだった。
私も救われる日が来るとは思えないです、なんて。
地獄の谷底に突き落とす真似は彼に酷すぎる。いくらそう思っていても、彼を突き放す事は出来なかった。私は優しく、残酷に嘯く。
「信じていれば、いつか必ず報われます」
「そうですか？」
「ええ。だって、このところ調子良いでしょう？ もうすぐ一年が経とうとしているのですよ。このまま平穏が保たれれば、卒業も夢ではないかもしれません」
「確かに。そうですね、いつの間にかもう夏ですもんね」
「ええ！ 上手くいってる証拠です！」
励ますように明るく振る舞えばシャンディラくんの気持ちも少しは晴れたようで、静かなる憤りは鎮火されていた。
でも、そう言う私は微塵も願ってなどいなかった。
貴方の卒業を。ひいては、貴方が私の元から離れて行く事を。
行くな、どこにも行くな、と心が叫ぶ。
表情のみならず本心まで隠してくれるこの鴉の仮面。仮面を外したら、貴方は何と私を非難することか。
いいえ、貴方は私を責めたりなどしない。きっと貴方は自分自身を責めて悲嘆し絶望に暮れるに違いありません。
ねえ、シャンディラくん。
賢い貴方はとっくに気づいているかもしれませんが。
私だって、一人のヒトなのですから。特別な感情だって抱くものなんですよ。
どれだけ親切な仮面を被っていたとしても、その奥底では今にも制御すら出来なくなりそうな激情が蠢いている。殻を破りそうで怖い。喉から手が出そうで怖い。
貴方が私の元に戻って来ないのが、この上なく不安だ。
次の講義があると言って立ち去った彼の背中が見えなくなって、私は手元に残った一枚の手紙を破り捨てた。大事な生徒の一人の気持ちを切り刻んで、塵芥の山に捨てるなんて。もうとっくに、私は教師失格のようだ。
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