夏宵- 2 ページ7
＜夏宵＞
花はいつもこうだ。
事務所のイベントなど、俺に限らずメンバーみんな誘うのだが、同じ理由で1度も催しに来たことがない。
それなら2階を関係者席として開放した水溜りボンドとの名古屋のイベントに来たらどうかと提案したら、関係者席なんて行けない、と断ってくる始末。
まぁ、おかげで事務所の人たちからはできた彼女だと頗る評判がいいのはありがたけど。
今回は地元の祭り。
例に漏れず俺から誘った。
そしたら今までよりもずっとハードルが下がったのか、
行こうかな、と言ってくれたのだ。
(舞台袖からの観覧はやはり断ってきた)
『すごい歓声だったね…6人とも。なんか、わたし、…楽しかった』
シンプルな感想と、その言葉を紡ぐ花の優しい視線は、紛れもなく昨日の俺らに対して向けられているものだということが、今更ながらにむず痒く、思わず頬が緩む。
「……楽しんで頂けたなら良かったですよ」
『うん』
ホント、楽しかった
と、もう一度呟く。
『ね、てっちゃんは？楽しかった？？』
「そりゃあね、楽しかったですよ？」
『……そっかあ』
自分のことのように嬉しそうに眦をさげる花。
気恥ずかしくなって丁寧な口調になる俺。
その俺の気まずさを察したかのように花がするりとその白い手で俺の腕に触れ、
筋張った辺りをそっと撫でる。
「なん。擽ったい」
『ふふっ。……なんか不思議。あんなすごい人数を集めて、熱狂させる人が、いま、こんなところにいる』
今度はこっちが白い指先を捕まえる。
柔らかいそれはピクッと動きを止める。
俺は何も言わずに重なった手を眺めている。
『……お疲れ様。また見にいくね、イベント』
自らの口元に俺の掌を寄せて、
小指の付け根あたりに優しく口づけをしながら花が囁いた。
ごく短いその言葉が、どうしようもなく嬉しかった。
「おう…」
奇跡といわれる仲間たちと生み出した喧騒の後に誰にも邪魔されない穏やかな時間。
この時間が、昨日の出来事をより鮮やかな思い出として記憶に刻んでくれるような気がした。
end.
*****
東海のみんなより少しだけ歳上の彼女さんのイメージで書いてます。
水溜りオンエア@名古屋に関係者席があったかどうかは定かではありません。あしからず。
お読み頂きありがとうございました。
短編集5篇完結です。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
終わり
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chochochorocco(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» Mrs.ぱんぷきん様 嬉しいコメントありがとうございました。今後ともご贔屓くださると幸いです。次回作以降もよろしくお願いいたします。 (2020年5月27日 1時) (
レス) id: b0e2c66e5f (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - Morningから読ませていただいて、とてもキュンキュンさせていただいてます！これからも応援してます！！！ (2020年5月26日 18時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Hina | 作成日時：2020年5月25日 15時
