Morning / Side;子犬 7 ページ7
『臭い!!てつや、あり得ない!!まじで!』
へ、へぇぇえええぇ?!?!?」
何か合図があったかのように、花が爆発した。
『あー、やっぱり嫌。本当に無理。なんなん全く』
「え?え?!」
『タバコ臭すぎ。もー耐えられん』
あー最悪なんていいながら
自分の衣服をバンバン叩き少しでもついたニオイを取り除こうとしている。
状況についていけない俺はさぞかし間抜けな顔をしてただろう。
「え?タバコ?え、今そこ??あの雰囲気で?!?!」
『いーえ、タバコだけじゃありません』
「ぇぇえぇっ……」
『そもそもの口が臭い』
「っつ……!!!」
『あと、髪も臭い。ホントいつ洗ったのよ。それで女抱こうなんてどういう根性してんのよあり得ない。抱かれてる女の顔が見たいわ』
「………ひっどぉぉいいいいい……」
鋭利すぎるナイフの襲来に俺はこらえきれずその場に崩れ落ちた。
「正に抱かれてる本人に言われるなんてつらすぎる……」
『ほんと、人生最大の過ちかもしれんわ』
ニヤニヤ笑いながら花は少しだけ乱れた自分の身なりを
玄関のでっかい全身鏡で整えていた。
もうやめてあげて花ちゃん…。
てっちゃんのライフはゼロよ…。
『じゃ、行ってくるね〜』
何事もなかったようにバッグを拾い上げ、
未だに打ちひしがれている俺を見下ろしながら花は言った。
『さみしくてさみしくて死んじゃいそうだろうけど、
てっちゃんおりこうさんで待ってられるかなぁ〜??』
「くっそ、さっさと行っちまえ…!」
完全にこの場を支配され、畳み掛けられてる状況が情けなくて、顔が上げられない。
なんでこうなっちまったんだよ、もう…。
『…お昼休憩の時にLINE電話するから』
「……」
『終わったらすぐ帰ってくるし』
「………」
『それともなんか甘い物買ってこようか?』
「………別にいらない」
『あそ、わかった』
子供をあやすようなセリフを吐きながら膝を曲げて俺と目線を合わせつつ花は俺の頭を撫でている。
その温もりにつられてなんだかもうどうでも良くなってくる。
ようやく顔を上げて、眉毛を下げて微笑む花の顔を見ることかできた。
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作者名:Hina | 作成日時:2020年5月21日 23時