Morning / Side;子犬 (ページ3)

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Morning / Side;子犬 3 ページ3

「……なんも言ってない」
『あそ』

そう。
嫌がられながらもこの位置に俺が居座る理由。
それはこの、朝の身支度をする花を眺めるため。
俺だけの特権。
誰も知らない極上の時間。

しかし、健全な朝にこんなやらしい視線に自分が曝されてるなんてけしてバレるわけにはいかない。
申し訳ないが少しの背徳感を帯びたこの遊び、
そうそう手放せるもんじゃないんだよな。
おかげですっかり朝起きる習慣がついたってもんだ。

こんな俺の行動を誤魔化すように、
花が化粧を始めてから3本目のパーラメントに火を点ける。
その気配を察知した花が上目遣いに睨んでくる。
終わりにするんじゃないんかいとでも言いたげだ。
その表情がまぁぁ可愛くて、部屋とは反対側に顔を向け、俺は吸い込んだ煙と一緒にそりゃあスケベな笑顔を吐き出した。
ニヤニヤが止まらないとはこの事だな。

『おっけ、でーきた』

軽快な声色と共にリップのキャップを閉める音が鳴ったらこのお愉しみは終了だ。
手早くダイニングテーブルに広げていた
たくさんの化粧品たちを片付け、
花はバタバタと廊下の向こうへ消えていく。
それを合図に俺もまた、手の中のまだ大分長さを残した相棒をぐしゃりと潰して、その場を離れる。
ダイニングテーブルには花の飲みかけのコーヒーが置き去りにされている。
一口もらってからシンクに動かした。

「いつもの時間？」
『うん。午前中にAmazon来ると思うから受け取っといてね』
「わかった」
『あ、あと、シンクのお皿洗っておいて。最悪水につけとくだけでもいいから』
「あぁ、覚えてたら」
『それくらい覚えといてよ、もう』

すっかり支度の出来上がった花の後ろについて、玄関への廊下を軽口を挟みながら進んで行く。
その後玄関先で二言三言会話したら、
いつも花はさっさと出掛けてしまう。

「花ちゃぁあ～～ん！！」
『うわぁあぁっ！ななに？！』

今まさに出ていこうとしていた花に後ろからガバっと抱きついてみせた。
完全に油断していた花はこの反応だ。
俺よりずっとずっと薄い身体は、簡単に腕の中におさまってしまう。
咄嗟のことに縮こまったその身体をくるりと回転させ俺達は向かい合わせになる。