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Vanilla-2 ページ10

〈Vanilla〉


『ねぇっ、花!いい匂いしてきたっっっ!!ねえってばぁっ!』
「はいはい、そうだねぇ」
『ねぇ、これあと何分??ねぇっ!』
「液晶に出てるでしょ?何分って出てる?」
『………あっ、あと8分!!』

型抜きしたクッキーをオーブンに入れ、後は焼いてくれるのを待つだけ。
その間にわたしは洗濯物を取り込んでソファに座りそれらを畳みながら興奮しているてっちゃんの相手をする。
てっちゃんは自分が作った(?)クッキーが愛おしいのか、オーブンの前に陣取り、その大きな身体を抱えて中を覗き込んでいる。
ホント子供が図体だけ大きくなったような人だ。



『マジ楽しみ』
「そんなずっと見てても変化ないでしょ?パンと違って膨らんだりはしないよ」
『お菓子作りとか間近で見たことなかったもん』
「てっちゃんのお母さんも作られてたと思うけどね」
『覚えとらんよ、ガキの頃だら?』
「元カノたちでいなかったの?趣味はお菓子作り♡的な子」
『おいおいおい、アナタの口から元カノとかいうフレーズはやめなさいって』
「あら、失礼」

バッとすごい勢いでこちらを向いて焦るてっちゃんがコントみたいで面白い。

「…ね、レンジ、熱くなってるからあんまり近づかないでてっちゃん、危ないよ」
『…………』
「てっちゃん?」
『ほーい……』

名残惜しそうにレンジの前から立ち上がり、背筋をひと伸ばししたてっちゃんがこちらにやってくる。

『こんなにうまそーな匂いがするんだな、焼いてる時って』
「そ。いいでしょ、このバターの香り。手作りならでは。あー幸せー」
『てか絵に描いたようなカップルの休日な事ない?』
「え、そうなの?クッキーが??」
『ん。恋愛映画とか漫画で女の子が好きな男子にお菓子作るの』
「うわー…てっちゃんの癖(へき)にどストライクな事しとる…、わたし」
『ちょっと、なんでそんな嫌そうな顔するのー!』

そう言っててっちゃんは少し強引にわたしを抱き寄せる。いや、首を軽く締められる態勢だ。やめてやめてと苦笑してたら、くぐもった少し低いてっちゃんの声が聞こえてきた。

『…ベタな休日、最高。も、好きぃ……花』


部屋中を揺蕩う甘い香り。
窓の外は快晴。
心地よい風。


オーブンが終了の合図を高らかに鳴らすのが聞こえた。


end.

************
我ながら無邪気な橙さんが可愛いですね笑
ところでその後編集は間に合ったのでしょうか。


ショートと言いながら長くて反省…。言い回しもっと上手くなりたい。
お楽しみ頂けたなら幸いです。

終わり ログインすれば
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Hina(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» Mrs.ぱんぷきんさま いつもコメントありがとうございます。寝ぐせお気に召したみたいで良かったです!引き続きお楽しみ頂けると嬉しいです! (2020年6月21日 12時) (レス) id: 97a2dfde2e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 独占欲……寝ぐせぴょこぴょこ………好きすぎます泣 毎回素敵な橙さんをありがとうございます!!!!! (2020年6月20日 23時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Hina | 作成日時:2020年6月20日 22時

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