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(Sakuma side)
舞香ちゃんは焦る俺とは正反対に冷静に答える。
「すい臓癌ってね、なかなか見付かりにくいの。自覚症状もほとんどないし。だから…」
俺はそれ以上聞きたくなくて、言葉を遮った。
桃「だから何？治ってくれないと困るんだって。めめは？めめはどうするの？遥香は？」
めめや遥香よりも、俺だ。
俺はどうしたらいい？
「さっくん。だから、さっくんに会いたかったの。会って伝えたいことがあったから。」
桃「どうして俺に？」
「蓮くんは一番さっくんのこと信頼してるの。ずっとずっと前から。さっくんの前では素直になれるんだって。」
桃「じゃあ何で舞香ちゃんの癌のこと…」
「そうね。それはまた別だったみたい。でも、蓮くんが信頼してることは変わらないわ。」
俺は何も言えない。
めめは、目黒は俺の気持ちを知らないから。
俺がずっと舞香ちゃんを想ってきたことを。
「それから遥香のことも。あの子のことを頼めるのはさっくんしかいないの。」
桃「俺は…」
「もし、私が癌に負けてしまってこの世から去った時には、二人のことをお願いしたいの。二人の支えになってください。お願いします。」
そう言って彼女は頭を下げた。
止めてくれよ、俺にはそんな資格はないんだ。
俺はずっと舞香ちゃんが…
桃「舞香ちゃん、俺はそんな立派な人間じゃない。二人のことを支える資格なんてないんだ。だから…」
「さっくんにしかお願い出来ないことだから。」
桃「だから俺はそんな…」
舞香ちゃんは言い切ったんだ。
「蓮くんの気持ちが一番分かるのは、さっくんだから。他の誰よりも蓮くんの気持ちに寄り添える人だから。」
何言ってるんだ。
俺はそんな人間じゃないんだ。
大切な友人で家族の大切な人を
ずっと想い続けてる俺なんだ。
桃「舞香ちゃん、俺は…」
「ごめんね、さっくん。さっくんに応えられなくて。」
桃「舞香ちゃん…？…」
まさか、俺の気持ち知ってた？
「ずっと想っていてくれてありがとう。なのに応えられなくて、ごめんなさい。」
桃「舞香ちゃん、俺は。」
「さっくん、泣かないで。」
彼女の手が俺の頬に触れた。
俺の涙を拭ってくれたんだ。
「泣かないで。私はさっくんの笑顔が大好きだから。だから泣かないで。」
微笑む彼女の瞳にも涙が溢れそうになっている。
桃「舞香ちゃん、俺は舞香ちゃんが」
彼女の指が俺の口を塞いだ。
「私はさっくんの笑顔が大好きだから、笑って？」
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作者名：ちょ | 作成日時：2021年11月20日 18時
