９２ 〜S〜 ページ12
結局は俺が傷つけて泣かせた。
熱で記憶が曖昧で知らなかったから…
なんて言い訳はできない。
だって美華の事がある以前から、Aは一抹の不安を抱えてたわけで、言葉が足りずに不安にさせたのも、そこに気づいてやれなかったのも俺が彼氏として不甲斐ないからに他ならない。
Aの不安が少しでもなくなればと、いつもより熱い身体をギュッと抱きしめた。
「美華はあの日、潤が本家の用事で出なきゃならないと入れ替わりで俺に必要な物持って来てくれたんだ。その時は俺も起きていて家に入れた事ある女なんて家族と美華だけで…まさかお前が家にいるなんて思いもしなかった。」
美華は幼馴染で…
親父の弟子と結婚した既婚者だ。
俺にとっては潤と同様家族みたいなもので…。
だけど何も知らないAにとっては知らない女と間違えられれば不安でしかないだろうな。
「ごめんな…。」
聞きたくても怖くて聞けない…
そんな葛藤を一晩してたんだろう。
俺のシャツをギュッと握りしめる手が震えてる事でAの気持ちを伝えてくれる。
「美華の誤解は解けた？」
コクリと頷くAの頭を撫でてやる。
「あとは…。」
「もういい…大丈夫です。」
変に口走ったと後悔してるのか、はたまた恥ずかしいだけか無理に話を終わらそうとする。
「大丈夫じゃないだろう？俺は不能扱いされたんだぞ？男の沽券に関わる事だろうが。」
「だから…もうわかったので大丈夫ですってば。」
「お前がよくても俺がよくない。」
お前の可愛らしさにどれだけ俺が耐えて我慢してきたのか…
もう二度と不安にならないように教えてやらねぇと。
「翔さぁん…。」
勘弁して欲しいのかギュ〜ッと抱きつき懇願する。
「そんな甘えた声出すな。ここでヤルぞ？」
「もぉ//！」
「お前の事が可愛くて可愛くてどうしょもなくて…どうやって可愛がって鳴かせてやろうか…なんてエロイ妄想ばっかして、我慢できなくなって虚しくセルフプレイしてた俺の気持ち…少しは理解しろ。」
「もぉ〜…そんなストレートに言わないで//！」
「ストレートに言わねぇとお前、また変な方向に考えるからな。」
回りくどい言い方をして、また良からなぬ方向に考えられても俺も困る。
「A？」
「…はい。」
「来月の出張、一緒に行くぞ？」
「え？」
「どうせなら思い出に残るようなハジメテをお前にあげたいんだ。」
俺…
こんなにお前の事思ってるんだ…
もっとちゃんと俺を見てよな…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
