蝶よ華よ… 【３】 (ページ2)

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ん～…と伸びをして固まった関節をポキポキと鳴らし、腕をぐるぐる回した。

一日、安静にしてたら熱も下がったらしい。

ベッドから出て、汗まみれのシャツを脱ぎクローゼットを開けた。

コンコンとノックと同時に開いたドアから潤が顔を出した。

「若。体調いかがですか？」

「すこぶる好調。」

「そうですか。それはよかったです。」

そう言った潤の様子が少しおかしい気がしたけど、
今日はAに会いに行けるって潤の事よりもそっちが大事で。

一日、会えなかっただけで会いたくてしょうがない。

Aに会える嬉しさが鼻歌になって表れて、ウキウキしながらクローゼットから適当にシャツを出した。

汗臭い自分に嫌悪して、そのままシャワーを済ませてタオルで濡れた頭を拭きながらリビングに向かった。

リビングのテーブルにはうさぎの形のりんごと、栄養ドリンクが置いてあって…

「潤。お前がうさぎのりんごって(笑)」

あまりに似合わない組み合わせにクスリと笑って、りんごを齧った。

「やはり…。」

マグカップを持った潤が、残念そうな顔をしてテーブルを挟んで俺の向かいに立つとコトリとマグカップを置いた。

「何が『やっぱり』なんだ？」

「それを剥いたのはA様ですよ。」

「………は？」

意味わかんねぇ…

どうしてAが？

「あの籠を持ってお見舞いにいらしてくださったのです。やっぱり覚えてらっしゃらないのですね？」

キッチンカウンターに置かれた果物の入った籠を指差して、潤が大袈裟にため息をひとつ。

「は？覚えてねぇっつーか…そんなの知らねぇし！」

記憶にない！

「え？じゃぁ…？」

「あ？」

「A様が若の寝室に入ってすぐに出て来られたので、私はてっきり若が熱で理性がぶっ飛んで無理矢理ベッドに連れ込んだのかと…。」

「んなわけあるか！」

お前は自分の主を何だと思ってやがる！

「じゃぁなぜA様は急いで帰られたのでしょう？」

「記憶がない俺にそれを聞くのか？」

「私がその後、慌てて若の寝室に入った時、確かに若は熟睡なさっていて起こすわけにもいかず…。」

納得ができない潤は難しい顔をして、うーんと考えてる。

「どうせ今日は会うんだし、その時に聞いてみればよくねぇか？」

「そうですね。今日の稽古は代理を立ててありますので早めに……失礼します。」

潤のスマホが鳴り、そちらの対応の為にリビングを出て行って、俺はAが剥いた可愛いうさぎを頬張った。