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和くんにバレないように音を立てずに急いで部屋に戻って布団を被った。
見てはいけない物を見てしまった。
私は経験ないし、それがどんな物なのか…
男の人みたいにビデオや本なんていうのも見た事がないし…
所詮、私の知識なんて耳年増なだけで…。
だけど、あれは間違いないと思う。
相手はきっとメイドの山岸さんで…
山岸さんも和くんもあんな甘い声を出すなんて初めて知った。
私に対しては甘い和くんだけど、全く違う気がする。
和くんと山岸さんがそういう関係でも別に嫉妬したりはしない。
むしろ優しい山岸さんが和くんを支えてくれてるのであれば喜ばしい事で。
だけど…
やっぱり男女の付き合いとはそういう物だって…。
私もいつかは翔さんと…？
でも…
翔さんにはその気はないっぽいし…。
私は山岸さんみたいに胸大きくないから、その気にならないのかな…？
心臓が自分で聞こえるほどドキドキと脈打って気持ち悪い。
今日は厄日だ…
私が知らなくていい事ばかり勝手に向こうからやってくる。
翔さんが呼んだ女性の事…
和くんと山岸さんの関係の事…
そして私が知らない事実と現実がたくさんあるって事が頭をぐるぐる回ってクラクラと眩暈がする。
到底、眠れずに一睡もしないまま朝がやって来て、早朝に出掛けた和くんがこちらに来る事もなく…
「お嬢様。おはようございます。」
布団を捲る相葉が爽やかな笑顔でベッドの横に立っていて、私の顔を確認すると眉間に皺を寄せて途端に厳しい顔つきになった。
「失礼します。」
おでこに冷んやりとした相葉の手が乗せられ、おでこから首筋にも指を当てた。
「お嬢様。熱がございます。」
「え？」
「大層な高熱ですよ？お辛いでしょう。ただ今、医者を手配致しますのでそのままお待ちください。」
私に布団を掛け直すと相葉は部屋を出て行き、代わりに山岸さんが入って来て…
「お嬢様。お着替え致しましょう。」
柔らかく笑って私の身体を起こす。
彼女が屈んだその時に豊満な胸元に見えた赤いアザ。
時々、山岸さんの胸元に見えてたそれが和くんがつけたキスマークだと今更ながらに知って…。
「お嬢様！お顔が真っ赤です。大丈夫ですか？！」
焦った山岸さんが再び私をベッドに寝かすと、おでこに冷却シートを貼ってくれて、『相葉さん！大変です！』って大きな声を出して廊下を走って行った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
