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「A〜？ただいま〜。和くんが帰って来たよ〜。」
「おかえりなさいませ。和也様。」
相葉は無視で、両手を広げてソファに座る私に向かって突進して、その勢いのままギュ〜ッて抱きしめられて頭を撫でられる。
そんな和くんはさながらムツゴロウさんみたい…。
「いい子にしてた？今日は何をしてたの？」
聞かなくても相葉に逐一報告させてるクセに…。
「A？」
抱きしめてた腕を緩めて私の顔を覗き込む。
何も言わない私に心配そうな目を向けてくれてる。
今かな？
今しかないんじゃない？
この体勢だと、和くんの弱い上目遣いでのお願いできるし。
よし！
「和くん？」
「ん？」
「お願いがあるの。」
「ん？なぁに？和くん、可愛いAのお願いだったらなんでもきいちゃうよ？」
「あ、あのね？」
「うん。」
「お、お華とか？お料理とか？習ってみたいなぁって…。お嬢様の必須習い事でしょ？」
相葉のお嬢様の定義からするとそうだったのに、わかりやすく眉間に皺を寄せて、途端に不機嫌。
何でもきいちゃうって言ってたの誰？
「高校の時に授業でやったでしょ？」
声低っ…。
確かにお華はお嬢様学校だったからやらされてはいたけど…。
「うん。そうだけどね？もっと習ってみたいなぁって…。」
不機嫌な眼差しでジッとジッと私の目を見て真意を汲み取ろうとしてる。
和くんは私が外に出る事をあまりよく思わない。
和くんが知ってるお友達とか、相葉を従えての買い物とかならまだかろうじて許しはもらえる。
和くんがこうなったのは、まだ学生の頃、女の子の友達と遊ぶと嘘をついて合コンに出てから。
門限の時間になっても迎えを呼ばない私を心配して、持たせていたGPSを辿り和くんが到着した頃には私は酔い潰れて、周りは乱行状態だったという…。
幸いな事に私はまだ未遂で済んではいたものの、和くんが見つけた時には男が私を組み敷いていた状態で、それを見た和くんは激昂して場を抑えるのが大変だったと後から智くんに聞いた。
それからというもの、和くんからの信頼は全くなくてひとりでは出歩く事はできず…
女の子と会うのでさえ、和くんが事前にその子に確認を取るという徹底ぶり…。
「ね？いいでしょ？」
上目遣いでおねだりポーズをするも和くんの眉間の皺は無くならない。
「いいじゃん。俺が手配しといてあげるよ。」
そう和くんの背後で言ったのは、ふにゃりと笑った智くんだった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
