４０ 〜S〜 ページ40
この女は俺にとっては数いた見合い相手のひとりでしかなくて、この女の外見と態度を見れば俺の好みではないと潤は理解して断りを入れてたはず。
そもそも俺がこんな性格で、女も同じような女王様気質だったら夫婦生活なんて成り立たねぇだろ。
潤はそこもちゃんと理解した上で断りを入れてたはずだ。
まぁ…見合い相手は俺の素を知らねぇし、大方大人しいお坊ちゃんだと思ってんだろ？
だいたい俺の事なんて微塵も好きじゃなく、『次期家元の妻』っていう肩書きが欲しいだけだ。
そんな事もわかんないようなバカ男じゃねぇんだよ。
「潤。ちょっと来い。」
ラウンジで待機してた潤を電話で呼び出す。
「翔様？」
「あぁ。付き人を呼んだのです。」
自分に堕ちない男はいないとバカな勘違いをしてるのか…
それともさっきの俺の笑顔の意味を自分の都合のいい方に解釈したのか…
淡々とそう告げた俺を怪訝そうに見てる。
「若。」
電話をして１分半で駆けつけた潤はさすがとでも言うべきか。
「あぁ。なんかこちらのお嬢様がひどく勘違いをされていて困ってるんだ。」
俺の向かいの席が空席なのをチラリと確認すると咄嗟に理解したのか…
「若。早々に二宮家に参りましょう。」
「あぁ。」
「私は先方に連絡をして車を回してきます。」
「あぁ。頼んだ。」
ジャケットの内ポケットからスマホを出しながらレストランを抜けて行った潤を見送り俺も席を立つ。
「翔様？」
俺の腕に縋るように腕を回すと、ご自慢の胸を俺に押し付けてくる。
その腕をやんわりと外すも、また掴まれ…
あぁ…もう我慢の限界だ…
それでなくてもAとの時間を邪魔されて、挙句逃げられ…
俺の計画丸潰れでイライラしてんのに…。
「離せや。」
「え？」
「離せって言ってんだよ。香水がくせぇし、化粧は濃いし…その胸だって作りもんだろうが。」
「何ですって！わたくしを誰だと思って？『親が偉いだけでテメェが威張んな。勘違いババァがよ』」
俺は一度だって生まれや親の名声を利用した事なんてない。
それを使って人をいいように操ったり、金に物を言わせて人を扱ったり…
そんなので周りにチヤホヤされたって自分が無力って思い知るだけだ。
『次期家元』っていうラベルはどうしたって剥がせないから、それに見合うだけの努力はしてきたつもりだ…俺は。
「じゃぁな。オバさん？金あるんだし今度はもっとまともな美容整形しなよ。」
にっこり笑って言って潤の待つ車に向かった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
