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櫻井さんに握られた手は、和くんのとは違う骨ばっててゴツゴツしてるけど、しなやかで繊細な手に包まれていて、初めて経験するくらい心臓がドキドキと動いてる。
手を合わせても無言のままで…
松本さんが美術館の駐車場に車を停めてドアを開けてくれるまで会話はなかった。
だけど、このあったかい手にドキドキするけど、なぜか心地よく安心をしてる私もいて…
車を降りる為に離した手が寂しいと感じてるのはおかしいかな？
「若、二宮様。いってらっしゃいませ。」
松本さんがそう言うと、櫻井さんはまた私の手を取ってゆっくり歩き出す。
大きな公園の中にある美術館だから、自然の草木の間を歩き…
やっぱり会話はないけど、自然を楽しむ余裕もない。
「…A…。」
不意に名前を呼ばれて、
「は、はい！」
大きな声で返事をしてしまい、周りの人達が何事かと私に注目してる。
恥ずかしくて俯いた私の頭上で、
「『A』…そう呼んでもいいか？」
周りの視線を感じないのか全く気にする事もなく、そう言われて…。
「…はい…。」
「よかった。」
安心したように微笑んだ櫻井さんは、夢に見た王子様と同じで…
「っ//」
「ふっ。やっぱお前、可愛いな。」
「〜//」
ほっぺが焼けちゃうんじゃないかってくらい熱い。
そんな私のほっぺに握ってない方の手をそっと添えられて…
「あちぃな(笑)」
「や、火傷しちゃいます。」
「んなわけねぇだろ(笑)ホント可愛いな…Aは。」
も…ダメ…
「…心臓…壊れちゃう…。」
「ん…それは…俺も…かな？」
苦笑いをしながら手をほっぺから離すと再び歩き出す。
「さ、櫻井さんも…？」
男性とお付き合いした事ない私と同じ…？
ほんとに…？
櫻井さんの年齢的に全く女性を知らないわけじゃないだろうけど…
「『翔』だ。」
「…。」
「俺が『A』と名前で呼ぶんだ。お前も同じように名前で呼べ。そうじゃないと対等じゃねぇだろ？」
なんという理屈なのか…。
しかもこの有無を言わさない命令系で俺様系の物言い。
でも…
耳の縁が真っ赤なのは見間違いじゃないはず…。
「翔…さん…？」
ピタリと足を止め、正面を向いていた顔をこちらに向けて…
「対等でいる為には呼び捨てがいいが…今はそれで許してやる。」
耳の縁を真っ赤にしたまま、嬉しそうに微笑んだ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
