１６ 〜O〜 ページ16
いつも冷静沈着な俺の雇い主。
仕事中はけして感情を表に出さずに淡々と業務をこなしている。
けど…
今日ばかりは時計をチラチラと何度も確認したり、足をトントンと鳴らして落ち着かない様子。
「相葉さんもついてるし大丈夫ですよ。」
「つーかお前、リストアップした先が全部男の師範とか何考えてんだよ。」
「たまたまですよ。どうせなら一流の先生に教えてもらった方がいいでしょ？お嬢様なんですから。」
和也的には俺のリストアップした教室はオール却下したかったんだろうけど、Aちゃんに通わせる事をオッケーした手前、断腸の思いで一番評判のいい先生を選んだ。
とは言え、どれを選んでも行き着く先は同じだったんだけど…
って言うのは社長と俺と先方の家元だけが知る事実。
和也には絶対にバレてはいけない。
俺が殺される…。
そんな事を思ってると電話が鳴り…
「はい。専務秘書室。」
ーお疲れ様です。相葉でございます。
「あぁ、相葉さん。お疲れ様。」
『相葉さん』って単語を発した途端にパソコンから顔を上げて、
「早く回せ。」
ってせっつかれる。
「専務に回します。」
ボタンを押して受話器を置いた。
専務が光の速さで受話器を取り…
「相葉。報告しろ。」
低い声でそう命令した。
最初は相槌を打つ和也だったけど…
「あ？お前ついてながらどういう事だ。」
眉間に皺がこれでもかってくらいに寄って、怒りがオーラになって見えるくらい…。
怖っ…
相葉さ〜ん、何してくれちゃったの？
無言のまま電話を切ると、
「帰る。」
それだけ言って立ち上がる。
スタスタと専務室を横切り、ドアまで一直線。
「専務。お待ちください。」
「うるさい。」
「専務。この後『うるせぇ。お前と親父の企みに気づいてもなお、Aを行かせたんだ。これ以上俺を怒らすな』」
あ、マジで？(笑)
バレちゃってた？
さすがは和也。
って褒めてる場合じゃないな。
隣の秘書室にいる他の秘書にスケジュールの変更を指示して、急いで和也の後を追う。
専務と社長専用のエレベーターは和也が乗ったと思い、社員用のエレベーターに回るもタイミング悪く最下層。
やっとエレベーターが到着して地下の駐車場に着くも、目の前を和也が運転するレクサスがスーッと通り過ぎて行った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
