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畳の部屋に踏み入れると、正面に正座してる男性と目が合った。
…え？
ええ？？！
何かの間違えかと思って、俯いて数回瞬きしてから見たけどやっぱり！
どうして私の夢に出てた王子様がここにいるの？
思わず少し後ろにいた相葉の腕を掴んだ。
「お嬢様？どうかされました？お着物でご気分が『う、ううん！大丈夫！』」
思いきり首を横に振る。
心配そうな相葉の目から逃れると、
「二宮様。どうぞこちらに…。」
松本さんが濃紺の着物を着て正座をする男性の前の座布団へと案内してくれる。
にわかに信じられない状況に、夢心地でそろそろと畳を擦るように小さな歩幅で歩き…
「お嬢様！」
畳の縁の小さな段差に足袋を引っ掛けて私が『あっ！』っと思ったのと相葉が叫んだのは同時で、転ぶと思ってギュッと目を瞑った。
「っぶねぇ…。」
痛くない…
そう思って目をゆっくり開くと目の前は若草色の畳じゃなくて…
「お嬢様！大丈夫ですか？！」
「若！」
私を受け止めてくれたのは『若』と松本さんに呼ばれてる王子様…
「ご、ごめんなさい！」
いえ…次期家元の先生で、その胸で私を受け止めてくれたんだと認識するとみるみる顔が熱くなって、恥ずかしくてパッと離れた。
「お嬢様。あのような針の山や鋏があるのです。お気をつけください。相葉は寿命が縮む思いでした。お嬢様の美しいお顔に傷がついたと知ったら和也様は正気ではいられなくなりますよ。」
王子様の前でお説教をされて、ものすごく恥ずかしくて…
「そ、そうならないようにするのがあなたの役目でしょ？何の為にここにいるの？！この役立たず！クビよ！クビ！私の下敷きになった王子様に謝りなさい！」
恥ずかしさで我を忘れてまくし立てる。
『…王子様…？』
３人の男性の不思議そうな声がハモって…
「あ…あの！次期家元って仰ってたので…お華の世界ではそうなのかな…？って…。」
王子様の目がジッとジッと真っ赤であろう私を真っ直ぐ見つめていて、自分の失態もこの状況にも恥ずかしくて恥ずかしくて泣きそうになる。
「あ、あい…相葉！！」
「はい。」
「帰るわよ！」
「え？お嬢様？…お嬢様！お待ちください！」
部屋から出て廊下を走るように早歩きで歩く。
こんな時に着物が煩わしくて…
夢にまで見た王子様との出会いは最悪で…
何もかも上手くいかない事に涙しか出てこなかった…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
