１３ 〜S〜 ページ13
親父のあの不敵な笑みが気になって、みるくちゃんとのにゃんにゃんタイムもどこか上の空。
『しょーちゃん？みるくのお世話してにゃん。』
猫耳をつけて猫になりきってるみるくちゃんのお世話はちゃんとしたけど、どこかスッキリしない。
だけど、あれから親父が何かをしてくるわけでもなく、出稽古も見合い紛いじゃなく老若男女分け隔てなく教えて…
二週間も経った頃にはすっかり忘れてた。
「若様。明日は別宅で出稽古です。」
「あ？なんでまた別宅？」
親父のいる本家とは別の別宅。
その昔は稽古の為に使われていて、生徒もそこに通っていた。
だけど今は、華を習う人口も減って…
本流だろうが次期家元だろうが自ら、カルチャースクールや出稽古に出向くサービスも必要で…。
「なんでも旦那様と所縁のある方だとか…。私もはっきりとした事は聞いてないんです。」
「面倒くせぇなぁ…。」
「どこだろうとお仕事には変わりありませんよ。」
「そうだろうけど…。」
別に華を生ける事は嫌いではない…
むしろ無心になれるその時間は好きだ。
幼い頃から次期家元になるっていうのが当たり前だったから、他に夢を持ったり別の職業に就きたいって思った事もない。
だけど、どっか…
何かが満たされなくて…。
その欠けた物が何なのかを探す事すら面倒でしない。
金はある。
地位もある。
女にも不自由してない。
俺はこれでいい…
てかこれ以上望んだらダメだろ？
贅沢過ぎるって神様に怒られちまう…。
・・・別宅で生徒を迎える準備をしながら、俺の目の前に置かれた座布団を数えてみる。
何度数えてもひとつだ…。
「潤。マジで親父の縁のある奴って誰だ？俺にマンツーで稽古って…相当だぞ？」
相当金があるか、相当上級者か…。
「いや…本当に私も存じ上げておりません。お名前が二宮様とだけ…。」
「女か？」
「おそらく…。」
「親父の愛人かよ。」
それはそれで面倒だな…。
でも、それならわざわざ別宅でってのもわかるし、母さんの手前、親父が自分で稽古をつけないのもわかる…
辻褄が合う。
「なんか一気にやる気無くしたわ…。」
そう言った俺に潤は苦笑いだけで返す。
面倒ゴトを押し付けやがって！
クソ親父！
けど…
潤が連れてだって来たのは、黒地に真っ赤な牡丹の着物を着た日本人形みたいな女の子だった…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
