蝶よ華よ… (ページ12)

今日:5 hit、昨日:28 hit、合計:210,094 hit

１２ページ12

相葉の運転でついた先はお庭もお屋敷も純和風な佇まいで、日本の伝統文化を習うに相応しい趣きがある。

「お気をつけください。」

後部座のドアを開けた相葉は、草履に慣れない私に手を貸してくれて、左手を預けると相葉はちゃんと支えてくれた。

「ありがとう。」

お礼を言う私にニッコリ笑顔だけを返して、歩き出す私の半歩後ろを歩きついてくる。

優雅に泳ぐ鯉がいる池の横を通り、無事に玄関先に到着した。

「相葉？」

「はい。何でございましょう？」

「もういいわ。待機してて？」

「何をおっしゃるのです？そのような事ができるはずもないでしょう？お嬢様に何かあったら和也様とのお約束を破る事になります。」

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。ただお華を習うだけよ？」

外にいるよりも室内のが安全でしょ？

そんな私の思考を読み取ったのか、無言で首を横に振る。

「相葉？あなたの主は誰？」

「もちろんお嬢様でございます。」

「それなら私の言う事に従いなさい。」

「それはできません。主はお嬢様ですが、雇い主は和也様です。」

「そんな屁理屈言ってないで『こんにちは』」

一歩も引かない相葉と言い合いをしていると、玄関がガラガラと開いて中から美男子が現れた。

今までの人生で見た事もない様な美男子に呆気に取られて口が開いたまま固まる。

「本日、お稽古をなされる二宮様でお間違えないでしょうか？」

「は、はい『はい。こちら二宮家のご長女のA様でございます。ワタクシはA様の執事の相葉と申します。本日はどうぞよろしくお願い致します。」

…相葉…

「…でしゃばり…。」

相葉に聞こえないような声でポツリと呟いた。

せっかく美男子と会話できる所だったのに…。

「お嬢様？これも執事の勤めでございます。」

…地獄耳…。

「二宮様。どうぞこちらに…。私がご案内致します…っと、申し遅れましたがワタクシ松本と申します。家元より若様の付き人を仰せつかっております。」

簡単に自己紹介を済ませた美男子松本さんの後をつき、室内を案内される。

「本日は次期家元の若様のお稽古をお受け頂きます。」

見事なまでの日本庭園を左手に見ながら綺麗に磨かれた長い廊下を歩く。

右手側はずっと障子が並んでるからお座敷なんだろう…。

靴を履いたままで過ごす完璧なまでの洋館なうちとは違い、完璧なまでの日本家屋。

「こちらでございます。」

そう言って跪いた松本さんが障子を両手を添えて開いた。