コード・ブルー：４・失う痛み (ページ12)

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・藍沢side＿＿＿＿＿

藤川はいつも救命に笑顔を運ぶ。

それだけ疲れていても、どれだけ苦しい時でも、彼は周りの人の笑顔を作ることを忘れない。

そんな彼に、なんて声をかけてやればいいのか、どれだけ考えても藤川の真似なんてできるわけなかった。

藍沢「わからないな、俺にも。俺たちには、藤川みたいに気の利いた言葉をあの二人にかけてやれないかもしれない。だから、ただお互いのそばにいてやることしかできない。」

そう思ったことを口にして、彼女の手を握る自分の左手に少しだけ力を込めた。

胡桃「なんか優しいね、今日は。」

そうれだけ言うと病院内だということも忘れ抱きついてくるAを、自分から離すことができない俺も同罪だ。

それからはしばらく他愛もない話をしていると段々とAに笑顔が戻ってきた。

二人きりで仕事以外の話をして過ごすのは久しぶりだった。

胡桃「ねえ、休憩いつまで？もう戻っちゃう？」

いつもはこんなこと言わないのに、少し名残惜しそうに言う彼女は珍しい。

藍沢「あぁ、もうそろそろ戻って脳外も回らなきゃならない。」

胡桃「そっか。」

そう言う俺たちは今日も夜遅くまで病院で、家に帰って数時間でも眠れればいい方だ。

スケジュールの調整は世間一般の男女とは比べ物にならないほど難しいだろう。

次にまた二人でこんな風に話せる時間はいつになるのかと考えると、俺までAを手放せなくなりそうだった。

胡桃「ごめん、引き止めて。」

そう言って、実はさみしいくせに笑顔を作る彼女。

その証拠にまだ手を離そうとしない。

朝藤川に言われたように、普段は厳しい医者でありながらたまに子供っぽい部分をのぞかせる彼女に、俺は甘いのかもしれない。

そう思った時には体が動いて、彼女の頬に手を添えてひたいにキスを落とした。

すると胡桃はまた笑って、

胡桃「ふふ、病院なのに。」

と言った。

確かに、同僚や患者に見られていたら、今後いつまでそのことについてめんどくさく絡まれるかわからない。

ただ過ぎたことはしょうがないので、この時間ここを通るやつはそんなにいないだろう、と自分に言い聞かせてごまかすことにした。

藍沢「俺もう行くけど、大丈夫か。」

胡桃「うん、大丈夫ありがと。私も戻る。」

すると俺より先に立ち上がる瞬間、彼女の唇が一瞬俺のそれに触れた。

少し妖艶に笑ってその場を去った彼女には、いつまでも勝てない事を思い知らされた。