. ページ4
明日以降の話をする担任の話をぼんやり聞き流しながら、どこかまとまらない頭を整理していた。
何かが足りてないような。忘れてるような。でも、何が抜けてるかが分からない。考えても考えても、足りないものなんか何もないから。
各自解散、の言葉と同時にざわつく教室にハッとする。とりあえずちょっと時間を潰して、バイトに行かなきゃならない。とはいえ、午前授業なのを完全に失念していた私のシフトは平常時の16:00からだ。ちょっとというには時間が余りすぎる。カラオケいく？なんて初日から元気なクラスメイトに夕方からバイトがあるからと断りを入れつつ、どうしたものかとスマホを手に取る。
ネットサーフィンをしていれば、同じように時間潰しをしている人も教室に何人かいるようだった。ふと顔を上げたら目が合ったギリギリ面識のある女の子と、暇だね、と言葉を交わした。
いくらか話していれば、窓の外、さらに下の方から大きな笑い声がしてふと声のした方に顔を向けた。
「あ、例の6人組」
「6人組？」
「うちのクラスにいるでしょ、田中樹。あの人がいるとこ。割と目立つから知ってると思ってた」
そうぽつりと教えてもらったのは、この学年で特に目立ってる6人組のこと。申し訳ないが1年の時の記憶には全くなくて、さすがに関心が無さすぎるんじゃないかと自分で呆れた。
陽キャ、というのはちょっと違うらしい。仲良し6人組…といった様子の人達だということ。女子からはかっこいいという話こそ上がるけど、6人だけの世界が形成されすぎているせいで皆から近寄り難いと噂されてること。それでもファン自体はいるらしいこと。
なんでそんな有名人知らなかったんだろう、とか思って。いや、知らなくてもあまり関係ないか。なんて、30分そこらでそれなりに仲良くなったクラスメイトの子に手を振った。
店長から早めの出勤を了承する旨のLINEを貰った最低賃金の時給で働く私は、カバンを片手にバイトへ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゆき | 作成日時：2023年3月30日 0時
