on stage. (ページ3)

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クラス替えは思ったよりもみんなさっぱりとしていた。
入学時の定員が200人だったうちの学年は、大幅な定員割れを起こしたせいで160人程度しかいない。そのおかげで学力がちょっと怪しい人たちもいるけれど、まあ凡そ顔ぶれは把握しているという人も多いのだろう。
かくいう私も何名か、1年の時からの関わりがある人たちとは一緒だった。それだけでも、まぁ今年度はなんとかなるという気持ちになっていた。

各机に置かれていた、クラスメイトの席順の紙を流し見しながらホームルームが始まるのを待つ。後から来た隣の席の女の子は優しく「席替えまでよろしくね」と挨拶してくれて、ちょっとほっとしたりもしたのだ。
そんな中で、ぽつぽつと聞こえてきた噂話。何となく耳を傾けてみる。盗み聞きみたいなものだけど、噂なんてこんなものだろう。

「うちのクラス、田中くんいる！」

いやいやなんてありふれた苗字だ。席順を見てみるけれど、田中という苗字の男子生徒と思しき名前だけで3人いる。判別がつかない。あんまり期待してなかったし…と目を伏せて机に突っ伏した。眠たい。
と、そうこうしているうちに担任となる教師が入ってきて、始業式だオリエンテーションだなんだと移動しては話を聞いてを繰り返す。こういう日は本当に憂鬱だ。
午前授業の最後の時間、担任が笑顔で教卓にたつ。

「まあ、クラス替えで初めての顔ぶれも多いだろうし定番の自己紹介からしよう。とりあえず席立って、近くのやつとかと挨拶回りして」

みんなガタガタと一斉に席を立つ。こういう方式にすると、基本話したことある人と駄弁って終わりになるんだけどな。
そう思っていれば、案の定と言った様子の生徒も数名見受けられた。ああ、私も適当に面識のある子の所に行こうかな…と視線を向けると、奥で女子に目線を向けられながらほかの男子生徒と話していた、派手そうな男子生徒と目が合った。彼はスタスタとこちらへ歩いてきては笑顔を向けてくる。

「初めまして！えーっと…Aさん？」

制服の左胸あたり、名前の刺繍を見て気さくに挨拶してくる男子生徒。同じように彼の刺繍を見れば、『田中樹』と刺繍されている。複数人いる苗字だと名前の1文字まで刺繍されるからだろう。

「どうも。Aです。えと…田中さん？」

「そ！田中樹。下の名前はこれ1文字で『じゅり』。よろしく！」

そう言って、二三言言葉を交わして、そんなのを何名か繰り返して午前の授業は終わった。