on stage. (ページ20)

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「……あ。家、ここです」
「ん。じゃあまた」
「はい、また…」
「あのさ」
「はい？」

結局家の前まで送って貰ってしまった。申し訳なさもありつつ別れを告げたのに、たった3文字でいとも簡単に引き止められてしまう。

「それ、なんでやめないの」
「それ、とは」
「敬語」
「ああ…いや、なんとなく…？」
「慎太郎とかも言ってたよ。別にタメなんだからいいじゃん、って」
「…努力します」

癖みたいなものだから気にしないでほしい反面、それくらいは仲良くしてもいいのだと嬉しくなる自分もいたりして。
今度こそまたね、と告げた彼は踵を返して去っていった。結局背中が見えなくなるまで見送ってから家に入った。
おかえり、と声をかけてくれる両親と軽く話したりして、シャワーを浴びて、いつも通り。
自室に戻りベッドに飛び込むと、うう、と声が漏れた。

なんにも気にしちゃいないんだろう。私がこんなふうに思ってるのを知りもしないんだろう。でも、だとしても、

「ずるい……」

柔らかい笑顔も。サラッと女子扱いしちゃうとこも。敬語外していいって、慎太郎が言ってたって言うなら別に京本から言う必要なかったじゃん。
…それに。勘違いした「すき」を、彼は否定も肯定もしなかった。びっくりした、と言ったけれど。拒絶の言葉もなければ、表情だって普段冗談を言っている時と変わらない笑顔で。

「………期待させないで…」

枕に顔を埋めながら、拗れそうな恋にひとり愚痴を漏らすしか、今の私にはできなかった。