第二十六話 ページ29
ー鶴丸国永sideー
『鶴…っ、かは、』
襟を掴む手に強く力を込めれば、
兄様は苦しげに息を吐く
白い睫毛に縁取られた丸い桜色の瞳には
薄らと涙が膜を張った
しかし兄様は抵抗することなく
ただ真っ直ぐに、俺を見つめた
「俺を置いて行くのか、兄様」
__兄様が居ない世界で、俺はどうすればいい
「…、一緒に居ようと、約束したじゃないか」
__この広い世で再び巡り会える可能性は、
ほぼ皆無に等しいのだろう
「なあ…頼むよ、兄様、」
「…独りに、しないでくれ、…っ!」
見下ろした兄様の白い頬に、ぽたぽたと雫が落ちた
兄様は柔らかく目を細めた後、
俺の背中に両腕を伸ばして強く抱き締めた
兄様の肩に額を押し付け、
背中に縋り付くように腕を回す
『鶴、よくお聞き』
温かく優しい声が、耳元で聞こえる
嗚咽を噛み殺しながら、耳を傾ける
『俺達は離れなければならない
それはこの世に生まれた限り、
俺達刀には避けようのない現実だ
美術品として飾られようとも、
御神刀として奉られようとも、
人を殺める道具として使われようとも、
それが刀の役目であり使命だ
受け入れ難い現実だとしても、
拒むことは許されない
世を恨んではいけないよ
俺達を分かつのはこの世だが
俺達を引き合わせたのもまた、この世だ
今は、耐えるしかない
次に俺達が出逢うことができるのは
何年、何十年、何百年、
はたまた千年先かもしれない
だが必ず、再び出逢える日が訪れる
俺達の絆は時の流れ程度に引き裂かれることはない』
兄様は両手で優しく俺の頬を包み、
確りと目を合わせた
『___愛しているよ、鶴丸
ほんの少しだけ、お別れだ』
そう言った兄様は瞳から露を零し、
愛しげに美しく微笑んだ
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赤ちゃん - この作品とても好きです大好きです!一生待ってます!!!!!!!!! (2022年8月4日 1時) (レス) id: cb168f6512 (このIDを非表示/違反報告)
鈴廻(プロフ) - 続編待ってます! (2022年7月9日 19時) (レス) @page32 id: 55af1cd0b0 (このIDを非表示/違反報告)
如月こもも(プロフ) - もう5年経っているのか…未だに続編待ってます…! (2022年2月21日 8時) (レス) @page32 id: 8278e6452f (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 続編待ってます! (2021年4月29日 12時) (レス) id: c90e4aee72 (このIDを非表示/違反報告)
飯綱 - とても面白かったです!続編お待ちしております! (2020年4月16日 22時) (レス) id: b25493a2a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅もち x他1人 | 作成日時:2017年4月23日 20時