41.役員って大変だね ページ2
.
文化祭の準備に追われている生徒会役員の帰寮時刻は、毎日午後8時くらいになっていた。
柏木薫もその一人で、今日もクタクタになりながら自室の扉を開けた。
そんな彼を見て、内心めちゃくちゃ心配している男が一人。──ルームメイトの、利島優だ。
＊
｢ただいまー……｣
｢……おかえり｣
俺がそう言うと、柏木はへらっと笑った。
｢利島も進化したよな。前まであんなにぶっきらぼうだったのに、今ではちゃんと返事してくれて……｣
｢……あんたは親か｣
そう我が子の成長を語るような口振りの柏木の目は、心無しか潤んでいる気がする。そしてズッと鼻をすすった。……仕事帰りに飲んで帰ってきて、いきなり泣き始める父親のようだ、と思った。
……というか、前までの柏木の中での俺の評価どんだけ低かったの。俺だって挨拶や返事するし。
｢遅くなってごめんな。今から夕飯作るから……って、え？｣
柏木は机の上に並べられた料理達を見て、目を見開いた。
実は、今日の夕飯は俺が用意してみた。……といっても、米炊いて近くのスーパーで惣菜買ってきて盛り付けただけだけど。
毎晩毎晩疲れた顔をしながら帰ってきて、夕飯を作ってる柏木を見ると、すごく申し訳ない気持ちになる。
一回自分の飯くらい自分で用意するから、柏木は食堂とかで済ませてくれば、と提案言ったことがある。……すると奴は、こう言った。
『いーよ。料理は気分転換みたいなものだし。ぶっちゃけ、利島が思ってるほど疲れてない。……それに、自分でどうにかするって、利島料理できんの？』
『……購買とかで買ってくれば、問題無いし』
『そんな生活続けてたら金掛かるだろ。いいって』
『……でも』
『……飯って一人で食べると味気ないだろ？ 一緒に食べた方が楽しいし、飯がよりうまく感じる。特に利島見てると、ああ飯作った甲斐あったなって思う』
『ど、どういう意味』
『気づいてないだろうけど、クッキーあげた時と言い、利島めちゃくちゃうまそうに食べるんだよ。表情は変わんないんだけど、こう……周りに花散らしてるみたいな雰囲気出すから』
『は、』
『だから、夕飯は今まで通り俺が作る。俺が遅くて腹減るなら適当に食ってていいし』
そして、にこりと笑った。……ここまで言われて、断れる筈が無かった。
しかし、疲れているのに作ってもらうのは、やはり申し訳ない。少しでも、柏木の負担を軽くしたい。
だったら、俺が作ればいい、と思い立った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます！ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´＿`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…！！ (2017年9月10日 22時) (
レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL？は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください！待ってます！ (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか？ (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/chiy1/
作成日時：2016年11月5日 12時
