タラントアレグラ【SVT】

5年生9月:大広間にて ページ4

ハッフルパフが出来損ないの集まり、なんて嘘だ。グリフィンドールほど勇敢ではないと言われようが、スリザリンほどずる賢いさがないと言われようが、レイブンクローほど勤勉ではないと言われようが、私は黄色に輝く穴熊を象徴としたこの寮に誇りを持っている。だから、より多くの新入生が入って欲しい、とも思っている。

天気を映し出す魔法がかけられているという天井は満点の星空が広がり、多くのロウソクで明るくなっている大広間に足を踏み入れると4つの長テーブルが置かれている。右から2番目が私たちハッフルパフのテーブルだ。久しぶりに会った友達の惚気を聞きながらテーブルに向かうと、いつも居るはずのスングァンとドギョムの姿が見当たらない。いつもうるさいのになあ。バーノンとも一緒にいないみたいだ。

「スングァンとドギョムは？」

友達と別れ、1人座るバーノンの元へ向かう。ヌナ久しぶり、と笑うバーノンは世界一だ。椅子に座って頬杖をつきながら私を見上げる彼に、2人の所在を尋ねる。あ、バーノン寝癖ついてる。かわいいなウリバーノン赤ちゃんみたい。

「2人なら合唱団にいるよ」
「合唱団？」

合唱団なんてあっただろうか。頭にハテナを浮かべた私に気付いたバーノンはある方向を指さす。そちらに目線を向けると、15人ほどの集団の中に落ち着きがなさそうにソワソワする2人が目に入る。

「え、なに？2人何すんの？」
「歌うんでしょ」
「そんなことは分かってるわ」

合唱団って言ってるんだから歌うに決まってるだろう。分かってるわ、と目の前に座るバーノンの頭を軽く叩くような手振りを見せると、大袈裟に避けようとするから笑ってしまう。なんでも、バーノンによると2人は今年から合唱団に入ったららしく始業式の今日、この大広間で練習の成果を見せるみたい。確かに、2人とも歌上手いもんなあ。ウリバーノンは歌わないの？と問いかけると、

「ヌナバカにしてる？」
大きく手を振りかぶろうとする様子を見せたバーノンに、次は私がびっくりして避けようとする。あ、バーノン笑った。

「そういえばヌナ。監督生おめでとう」

近況を尋ねながら彼との会話を楽しんでいたら、思い出したように私に祝いの言葉を告げる。その目線は、ローブのバッチにしっかりと向けられている。

「ありがとう、私バーノンのこと守るから！」
「辞めてよ恥ずかしいな」

こんなにかわいい後輩の笑顔を見れるなら、監督生の立場を利用するのもいいかもしれない。

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