ハート ページ37
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「本当気持ち悪い…」
お腹を押えながら相変わらず青白い顔をしているイッペーくん。駆け寄りながら背中をさすると、ありがとう。とお礼を言われた。
気持ちが弱いのか、第1ターンの時からずっと体調が優れなさそうだ。
「いつまで続くの…。」
うわ言のように吐き出しながら、彼が歩き始める。
ウルミ達と協定を結んだ以上、ここで結託していても彼女たちの話し合いに参加しなければならない。
あんな事を言われたから憂鬱だけど…。
階段を降りながらあまりにもイッペーくんが泣きそうな顔をするものだから、地下室にたどり着いた際に彼に言葉を投げかける。
「お腹とかが痛むの?」
「…もう、全体的に無理…。」
全体的。
どうすればいいんだろう、とりあえず胃腸薬とかかな。
少し待っててね、と彼の体を椅子に下ろし、首輪を見せあっているウルミ達を一瞥して棚を物色し始めた。
「A?」
「ごめん、薬探すから先にマーク確認してて、チシヤ。」
イッペーくんが申し訳なさそうに頭を下げる。
仲間なんだから。そう微笑みながら食料庫の反対側の戸棚を開け始める。
水が大量に完備されている所からペットボトルを1本取り出した。
向こうでは一足先にマークを確認しあっている声が聞こえた。
お目当ての薬を取り出し、錠剤の数と使用料法を確認して手のひらに載せる。
遅れて皆の輪に入ると、もう確認のし合いは終わっていたようで私が最後の一人だ。
イッペーくんに薬を手渡す。
戸惑った顔をしてお礼を言われ、彼がすぐに薬をかけこんだ。
「ほら、後ろを向いて」
髪の毛をあげて首輪を見られる。
「あなたのマークはハートよ。」
ハート。
こくりと頷いて「ありがとう。」と言うと、うん、ハートハート…。と遠慮がちに頷く取り巻き。
1度も目が合わないその挙動に既視感を覚えながらチシヤの方へ戻っていくと、いつになく鋭い眼光でウルミを睨みつけた彼が「厄介だねぇ、本当に。」と呟いた。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時