共犯者 ページ27
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Ippei side
「…あ、チシヤさん」
独房から出てきた彼の後ろで、Aさんが微笑んでいる。
うっすらと顔色が青白い気がする。
ちょうど良かった、次はチシヤさん達の番ですよ。
そう言えば、バンダさんとマツシタさんが「いつまで続くんだろう」とヒソヒソ話す声が聞こえた。
「ジャックが殺戮を始めるか、それを恐れた誰かが殺戮を始めるか。そのどちらかが始まらない限り…、永久に終わらないよ。」
「……その通り」
バンダの話を肯定するチシヤさん。
「みんなで教えあってる限り僕達は大丈夫だよ。」
バンダくんが僕たちの言葉にチラリとこちらを見た。
ヒラヒラと手を振る先はAさんだ。
ゆるりと微笑むバンダくんの目線から隠すように、さりげなくチシヤさんが動いた。
背に庇うようにAさんを隠し、やけに冷たい瞳がバンダくんを貫く。
相変わらず表情を動かさない彼は、微笑みを深めるばかりで正直気味が悪い。
「何なんだよ!」
大きな音がして、思考が途切れた。
皆が「何があったのか」と動きを止め凝視する。
転がるように出てきた青年をいたぶるのは、確かキリウという大男。
序盤からイラついて物に当たっていたから、要注意人物としてよく覚えている。
「てめぇさっさと教えろよコラ!」
だいぶ怒ってる…。
スっと動いたバンダくんが青年を起こし、耳元で何か囁く。
目を見開いて驚愕の顔を見せた後、イライラしながらコチラを睨みつけるキリウを見ながら逡巡した。
「まだ殴られてーみてえだな、あ?」
青年の首元を持ち上げ拳を振り上げる。
みんな、おぞましいという顔をしているのに誰も止めない。
唯一、Aさんがピクリと動こうとしてチシヤさんに止められていた。
「さっさと言えよ、おい」
「クラブ…!」
キリウが拳を振り上げた瞬間、目を瞑りながら青年が呟く。
クラブ、と言い聞かせるようにもう一度言うと、唇を片端上げた男が笑いながら「次はすぐに言えよ」と乱暴に青年を解放した。
睨みつけるように目の前を通り過ぎていくキリウ。
チラリと首輪のマークが目に入る。
「あっ…」
「シッ。」
ダイヤ。
ダイヤだ、彼のマーク。
クラブって言ったのに。
思わずチシヤさんを見ると、「ここからがゲームの本番だね」と静かに言う。
そんな…。
このままじゃ死んじゃうのに、誰も何も言わない。
「皆彼を邪魔だと思ってるから。」
僕の考えを引き継ぐようにAさんが言えば、皮肉そうに口端を吊り上げた。
「所詮みんなも共犯者」
冷たいオーラを纏ったAさんが座り込む青年を気遣わしげに見ると、察したようにウルミが駆け寄り仲間に引き入れた。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時