The Crow's Dream 4 (ページ16)

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願ったり叶ったりページ16

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「……ん、」

朝だ。
カーテンから漏れる明かりに瞳をうっすら開けば、鳥のさえずりが聞こえた。
何も身に付けていない自分の体を見下ろし、思わずシーツの中へ潜り込む。
上質なサテンの手触り、目の前には目を閉ざす端正な顔立ちの男。
悲鳴をあげそうになってすんでの所で堪えた。
…よくやった、私。

「…綺麗だなぁ」

どう考えても綺麗だ。
小さく零しながら、おずおずとチシヤの髪の毛に触れる。
ブリーチしてるのになんでこんなにサラサラなんだろう。
もしかして地毛…？なわけないか。
こんなに日本人離れした色なのに、似合っているのが不思議だ。

…髪の毛の色も、どことなくハルに似ている。
ビーチで可愛がっていた猫を思い出し眉を下げた。

…あんな大火災があったんじゃ、ハルは逃げきれないだろう。
ピアノを弾いていた日は毎日と言って良いほど顔を覗かせてくれた小柄な猫を思い出し、つい感傷的になる。

「…気は済んだ？」

ボーッと彼の顔を見ていると、何の前触れもなくパチリと目が開かれて思わず飛び退く。
クスリと笑ったチシヤがうーんとシーツの中で背伸びして、おはよう。と声をかけた。

「…お、はよ…」

「体、痛む？」

生々しい事を聞かれて言葉に詰まる。
もう大人なのにこんなウブな反応をして、面倒くさいって思われたらどうしよう。
チラリとチシヤを覗き込むと、「可愛いね」と言いながら頬を緩められたものだから。
…それもそれで、どう返していいか分からない。

「もうそろそろ、ゲームに参加しなくちゃいけないかな」

目を細めるチシヤは、窓の外から浮かび上がる飛行船を見つめている。
ハッとなって、倣うように私もそこを見ると、プカプカと浮かんでいるのはハートのジャックだった。

「…あの下、どこだろう」

「さぁねぇ…。千代田区だから、国立劇場辺りかな。」

目星をつけるチシヤ。
これからどうなるんだろう。
離れるにしても一緒のゲームに行くとしても、それぞれ違ったリスクが着いて回る。

「A、どうする？」

「…え、」

頬杖を着いてこちらを観察するチシヤに、私は戸惑った声を出した。
「どうする？」の一言に色んな意味が込められていて。
どうしよう。
そんなことしか返せない自分が恥ずかしい。
決められない、こんな大事なこと。
ビーチにいた時はもっと強くて、色々なことをこなしてきたのに。

「…チシヤどうしよう。私、弱くなっちゃったかも」

泣きそうな顔で彼を見れば、一瞬驚いた顔をした後に私に近寄り、そっと髪の毛を撫でた。
手触りを楽しむように何度も優しく往復した後、掠れた低音で彼は言うのだ。

「願ったり叶ったりだね。」

と。