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エム? ページ13



your side


好きな人には、いい所ばかり見せたいのが女の子の本音だ。
それは私も例外ではなく、先程の痴態を思い出して頭を抱えそうなる。


「うん、なかなかいいね。綺麗だ。」


壁を触りながら確認する。
前の宿泊者がなにか残していないかと、金庫や棚を物色するチシヤを後ろからボーっと見つめていると、彼が突然振り向いた。
何も反応しない私を訝しげに思ったのか、澄んだ猫目が細められる。
ダメだ。
その仕草だけでもう完敗、もうお腹いっぱいだよ。
初めて会った時から、人を見下す彼が時折見せる優しい表情に心惹かれていた。
つまり、そういう事だ。


「どうしたの?」

「あ、……ううん。いいもの、あった?」

「無いなぁ。…連絡を取れる手段も無さそうだ」


所謂トランシーバーなどだろう。
ビーチの人達は良くそれを使って連絡事項を伝達していた。


「そっか…。」

「まぁ、とりあえず次のゲームまで体を休ませよう。ハートの10をクリアしたからビザはたんまり有るしね」


よっこらせ、と膝を使って体を起こし、棚から取り出した雑貨を丁寧に戻し始める。
…何も思ってないのかな。
縋り付いて泣いちゃったり、あらぬ事を言った気がするけど。
あれって、普通のこと?
チシヤにとっては意識するまでも無いって事?

ボーっと考えていると、チシヤがまた連絡手段について話し始めた。


「これじゃあ合流できないね」

「そうだね…。」


息を吐く自分を見てニヤリと笑って見せたチシヤ。
時折見せる優しい顔が好きだと言ったけれど、これは意地悪な顔。


「でも俺がいればいいんでしょ?」


…しっかり覚えてた。
それを言われるとは思っていなくて、言い返そうにも言葉が出てこない。
顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせると、ふっと笑った彼が立ち上がった。

私は彼の、こんな意地悪な所も好きだなんて。
……案外、エムなのかもしれない。

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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時

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